訪問看護の入浴介助 脱水とヒートショックを防ぐ基本原則
看護師国家試験 第106回 午前 第68問 / 地域・在宅看護論 / 在宅療養生活を支える看護
国試問題にチャレンジ
在宅で訪問看護師が行う要介護者の入浴に関する援助で適切なのはどれか。
- 1.入浴前後に水分摂取を促す。
- 2.浴室の換気は入浴直前に行う。
- 3.浴槽に入っている間に更衣の準備をする。
- 4.入浴前の身体状態の観察を家族に依頼する。
対話形式の解説
博士
今日は在宅での入浴援助の問題じゃ。高齢者の入浴は安全管理が肝心じゃよ。
アユム
お風呂って気持ちいいイメージですが、事故も多いんですか?
博士
そうじゃ。厚労省の推計では、高齢者の入浴関連死は年間約19,000人にのぼる。冬場の12〜2月に集中しておる。
アユム
そんなに多いんですね…。原因は何ですか?
博士
主因はヒートショック、脱水、浴槽内の意識消失・溺水じゃ。暖かい部屋から寒い脱衣所に移動すると血圧が急上昇、湯船に浸かると血管が拡張して血圧急降下。心臓や脳に大きな負担がかかる。
アユム
血圧の乱高下で失神することもあるんですね。
博士
うむ。さらに発汗で脱水が進みやすい。高齢者は口渇中枢の感度が低下しておるから、のどの渇きを感じにくく、気づかぬうちに脱水になる。
アユム
なるほど、だから選択肢1「入浴前後に水分摂取を促す」が正解なんですね。
博士
その通りじゃ。入浴前と入浴後にコップ1杯程度の水やお茶を飲んでもらうのが基本じゃよ。
アユム
選択肢2「浴室の換気は入浴直前に行う」は?
博士
これは誤り。直前に換気すると冷気が入り、温度差が広がってヒートショックのリスクが上がる。換気は事前に済ませ、浴室と脱衣所を十分に温めておくのじゃ。
アユム
選択肢3「浴槽に入っている間に更衣の準備をする」は、効率的に見えますが…。
博士
危険じゃ!浴槽内で意識消失や転倒が起これば即座に対応せねばならん。更衣やタオルは入浴前に準備して、入浴中は絶対に目を離してはならぬ。
アユム
選択肢4「身体状態の観察を家族に依頼する」は?
博士
バイタルや全身状態の観察は専門職の責務じゃ。家族の情報も参考にするが、看護師自身が必ず観察する。
アユム
普段見えない部分を観察できる貴重な機会でもありますよね。
博士
うむ、皮膚トラブル、褥瘡、浮腫、傷、虐待の痕跡まで含めて、全身を丁寧に見る機会にすべきじゃ。
アユム
入浴のタイミングや温度はどうすればいいんですか?
博士
湯温は41℃以下、浸かる時間は10分以内が目安じゃ。食直後や飲酒後は避ける。脱衣所と浴室を20〜25℃程度に温めておく。
アユム
実際に入浴が困難な方には、清拭や部分浴も選択肢ですよね。
博士
その通り。全身浴が心不全等で難しい場合は、足浴や手浴、シャワー浴で代替する。清潔援助はQOLの大切な要素じゃ。
アユム
単なる清潔保持ではなく、循環・皮膚・心理・観察まで含めた総合ケアなんですね。
博士
うむ、訪問看護師の腕の見せどころじゃよ。
POINT
訪問看護における入浴援助は、清潔保持だけでなく脱水・ヒートショック・浴槽内事故といったリスク管理が大きな鍵を握ります。特に高齢者は口渇を感じにくく発汗で容易に脱水するため、入浴前後の水分摂取は最も基本的な安全対策です。あわせて、浴室・脱衣所の温度差を小さくしヒートショックを防ぐ、入浴中は決して目を離さない、全身観察は看護師自身が行う、湯温41℃以下・10分以内・食直後や飲酒後を避ける、といった原則を押さえます。訪問看護師は介助そのものに加え、家族への環境調整教育、全身観察、皮膚トラブルの早期発見など多面的な役割を担い、高齢者の入浴関連死予防に貢献します。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:在宅で訪問看護師が行う要介護者の入浴に関する援助で適切なのはどれか。
解説:正解は 1 の「入浴前後に水分摂取を促す」です。入浴は温熱作用・静水圧・浮力などにより全身の血行を促進し、リラクゼーションや清潔保持に寄与する一方、発汗・血管拡張により脱水・血圧低下・起立性低血圧・意識消失・浴槽内事故のリスクを伴います。特に高齢者は口渇中枢の感度低下で脱水傾向にあるため、入浴前後に水分(コップ1杯程度)を摂取してもらうことが安全管理の基本です。加えて、浴室・脱衣所の温度差を小さくしてヒートショックを防ぐ、入浴は食後1時間以降にする、入浴中は1人にしないといった基本原則も押さえましょう。
選択肢考察
-
○ 1. 入浴前後に水分摂取を促す。
発汗による脱水予防と循環動態の安定のため、入浴前後の水分摂取は最も基本的で適切な援助。高齢者は口渇を感じにくいため、看護師からの促しが重要。
-
× 2. 浴室の換気は入浴直前に行う。
直前に換気すると浴室と脱衣所の温度差が広がり、ヒートショックのリスクが上がる。換気は事前に済ませ、入浴前には浴室と脱衣所を十分に温めておくのが望ましい。
-
× 3. 浴槽に入っている間に更衣の準備をする。
浴槽内で意識消失・溺水・転倒が起こり得るため、入浴中は目と手を離してはならない。更衣・タオル・着替えは入浴前に準備しておく。
-
× 4. 入浴前の身体状態の観察を家族に依頼する。
バイタルサインや全身状態の観察は専門職である看護師の責務。家族の観察を参考にすることはあっても、看護師自身が必ず観察を行う必要がある。
高齢者の入浴事故は年間約19,000人が死亡する(厚労省推計、ヒートショック関連含む)大きな健康課題で、冬場12〜2月に集中する。予防のポイントは「脱衣所・浴室を20〜25℃程度に温める」「湯温41℃以下」「湯につかる時間10分以内」「食直後や飲酒後は避ける」「一人で入浴させない」「入浴前後の水分補給」など。訪問看護師は入浴介助そのものに加え、こうした環境調整の教育も担う。
在宅入浴援助の安全管理の原則(脱水予防・ヒートショック予防・転倒溺水防止)から最も基本的な項目を選ぶ問題。
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