在宅で胃瘻患者の口腔ケアを安全に行うコツ
看護師国家試験 第107回 午前 第61問 / 地域・在宅看護論 / 在宅療養生活を支える看護
国試問題にチャレンジ
Aさん( 83歳、男性 )は、脳梗塞( cerebral infarction )の後遺症で右片麻痺があり、在宅療養中である。嚥下障害のため胃瘻を造設している。義歯を装着しているが、自分の歯が数本残っている。 Aさんの口腔ケアについて、介護者への指導で適切なのはどれか。
- 1.義歯を装着したまま歯を磨く。
- 2.経管栄養直後に実施する。
- 3.ペースト状の歯磨剤を使用する。
- 4.歯垢の除去には歯ブラシを用いる。
対話形式の解説
博士
今日は胃瘻のAさんの口腔ケアについて考えてみるぞ。なぜ口腔ケアが必要なんじゃ?
サクラ
食べ物が口から入らない方でも、唾液や剥離上皮に細菌が繁殖して誤嚥性肺炎の原因になるからですね。
博士
その通り。特に脳梗塞後の嚥下障害では、咳嗽反射も低下しておるから感染リスクがぐっと上がるんじゃ。
サクラ
義歯を装着したまま磨いてもいいのでしょうか。
博士
だめじゃ。義歯の下には食物残渣や真菌が溜まりやすいから必ず外して洗浄するんじゃよ。
サクラ
経管栄養直後のケアはどうですか。
博士
これも危険じゃ。胃内容が多い状態で刺激を加えると嘔吐・逆流して誤嚥につながる。栄養前か、終わって1時間以上経ってからがよいぞ。
サクラ
ペースト状の歯磨剤は?
博士
泡だらけになって水で流す必要がある。嚥下障害のある方には水分の誤嚥リスクが高まるから避けるんじゃ。代わりに口腔用ジェルがおすすめじゃ。
サクラ
歯垢はスポンジブラシで取れませんか。
博士
スポンジは粘膜清掃にはよいが、歯垢はバイオフィルムで物理的に削り取らねば除去できん。歯ブラシが基本じゃ。
サクラ
水を使うときの工夫はありますか。
博士
ガーゼで拭き取りながら行う、吸引機能付き歯ブラシを使う、頭部を30度挙上して側方を向けるなど、咽頭に水が流れ込まない体位を取ることじゃな。
サクラ
Aさんには残存歯が数本あるんですよね。
博士
そうじゃ。残存歯はむし歯や歯周炎の温床になりやすいから、歯ブラシによる機械的清掃が欠かせん。介護者には力を入れすぎない優しいブラッシングを指導するんじゃ。
サクラ
義歯の管理も教えた方がよさそうですね。
博士
夜間は外して義歯用ブラシで洗い、洗浄剤入りの水に浸けておくのが基本じゃ。装着しっぱなしは義歯性口内炎やカンジダ症のもとになるぞ。
POINT
嚥下障害のある在宅療養者では、口腔ケアが誤嚥性肺炎予防の要となります。本問のポイントは、残存歯の歯垢除去には歯ブラシを用いるという原則と、義歯は外す・経管栄養直後は避ける・ペースト歯磨剤は使わないという3つの注意点です。水分の使用は最小限にし、体位の工夫や吸引の併用で安全性を確保することが介護者指導の要点となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん( 83歳、男性 )は、脳梗塞( cerebral infarction )の後遺症で右片麻痺があり、在宅療養中である。嚥下障害のため胃瘻を造設している。義歯を装着しているが、自分の歯が数本残っている。 Aさんの口腔ケアについて、介護者への指導で適切なのはどれか。
解説:正解は4です。Aさんは嚥下障害があり胃瘻から経管栄養を受けていますが、口腔内には常在菌や分泌物が貯留しやすく、誤嚥性肺炎を予防するうえでも口腔ケアは必須です。残存歯にはバイオフィルム(歯垢)が形成されるため、機械的除去に最も有効な歯ブラシを用いるのが原則です。嚥下障害がある場合は水分使用量を最小限にし、必要に応じて口腔内吸引を併用しながら実施します。
選択肢考察
-
× 1. 義歯を装着したまま歯を磨く。
義歯を外さずにブラッシングすると、義歯と歯ぐきの隙間に残る食物残渣や付着した細菌を十分に除去できません。義歯は外したうえで義歯用ブラシで洗浄し、残存歯と口腔粘膜は別に清掃します。
-
× 2. 経管栄養直後に実施する。
経管栄養直後は胃内容が多く、刺激による嘔吐・逆流から誤嚥を招く危険があります。口腔ケアは経管栄養の前、または注入終了後しばらく時間をおいてから行うのが安全です。
-
× 3. ペースト状の歯磨剤を使用する。
ペースト状の歯磨剤は泡立ちが多く、口腔内に残った泡を洗い流すのに多量の水を必要とします。嚥下障害を持つAさんでは水分が咽頭に流入して誤嚥するリスクが高まるため、使用は避け、ジェルやブラッシングのみで対応します。
-
○ 4. 歯垢の除去には歯ブラシを用いる。
歯垢は細菌のかたまりであり、うがいやスポンジブラシだけでは除去できません。毛先を歯面に当てて物理的にこすり落とす歯ブラシが最も有効で、残存歯がある場合は必須のケア用具となります。
在宅で嚥下障害のある高齢者の口腔ケアでは、頭部を30度程度挙上しやや側臥位にして唾液が咽頭に流れ込まないよう工夫します。吸引機能付き歯ブラシや口腔用スポンジ、保湿ジェルなどを組み合わせると安全性が高まります。義歯は夜間に外して洗浄液に浸漬するのが基本です。
嚥下障害・胃瘻患者における口腔ケアの適切な方法と誤嚥予防の工夫を理解しているかを問う問題です。
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