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アスベストと石綿肺 ─ 静かに進行する職業病の正体

看護師国家試験 第109回 午後 第3問 / 必修問題 / 健康の定義と影響要因

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第3問

じん肺( pneumoconiosis )に関係する物質はどれか。

  1. 1.フロン
  2. 2.アスベスト
  3. 3.ダイオキシン類
  4. 4.ホルムアルデヒド

対話形式の解説

博士 博士

今日はじん肺について学ぶぞ。英語でpneumoconiosisと言うこの疾患は、どんな物質で起こるか知っておるか?

サクラ サクラ

えーっと、煙や化学物質を吸い続けるとなる肺の病気ですよね?

博士 博士

惜しいところじゃ。正確には『鉱物性の粉じん』を長期間吸い続けることで、肺の中に粉じんが沈着して線維化を起こす疾患じゃ。

サクラ サクラ

ということは、有機物の煙とは別物なんですね。

博士 博士

そう。たばこの煙や排気ガスでもCOPDなどは起こるが、じん肺は粉じん特有の疾患じゃよ。選択肢の中で該当するのはどれじゃ?

サクラ サクラ

アスベストですか?建築現場で問題になったと聞いたことがあります。

博士 博士

正解!アスベスト(石綿)は繊維状のけい酸塩鉱物で、吸入すると細い繊維が肺胞まで到達して長く残り、線維化を起こす。これが石綿肺、じん肺の代表例じゃ。

サクラ サクラ

他にはどんなじん肺がありますか?

博士 博士

珪肺は遊離珪酸を含む岩石を扱う採石業で発症する。炭坑夫肺は石炭粉じんが原因。それぞれ職業と結びついておる。

サクラ サクラ

フロンやダイオキシンは関係ないんですか?

博士 博士

フロンはオゾン層破壊や温暖化、ダイオキシンは発がん性や内分泌撹乱で問題になるが、いずれも鉱物性粉じんではない。ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因物質じゃ。

サクラ サクラ

アスベストは肺がんとも関係がありますよね。

博士 博士

そう、石綿肺だけでなく、肺がんや悪性胸膜中皮腫のリスクを大きく上げる。潜伏期間が20〜40年と長いのが特徴じゃ。

サクラ サクラ

じゃあ昔曝露した人が今になって発症することもあるんですね。

博士 博士

その通り。日本では2006年にアスベスト使用が原則禁止になったが、過去に建てられた建物の解体現場では今も曝露リスクがある。

サクラ サクラ

看護師としては何に気を付けるべきですか?

博士 博士

患者の職歴を丁寧に聴取することじゃ。建築・造船・自動車整備などの既往があれば、呼吸困難や胸痛の原因としてじん肺を疑う視点が大切。

サクラ サクラ

職業歴がカルテの一行で終わらないように、ということですね。

POINT

じん肺は鉱物性の粉じんを長期にわたり吸入することで肺が線維化する職業病であり、アスベスト(石綿)は代表的な原因物質です。石綿肺と呼ばれるアスベストによるじん肺は、肺がんや悪性胸膜中皮腫のリスクも高め、潜伏期間が数十年に及ぶため、過去の曝露が現在も発症源となります。フロンはオゾン層破壊、ダイオキシンは環境汚染、ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因物質であり、それぞれ健康影響の機序が異なる点を整理しておくことが重要です。看護師は職業歴の聴取を通じて曝露歴を把握し、じん肺法に基づく管理や健診につなげる視点を持つことが求められます。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:じん肺( pneumoconiosis )に関係する物質はどれか。

解説:正解は 2 の「アスベスト」です。じん肺は鉱物性の粉じんを長期間吸入することで肺胞や細気管支に粉じんが沈着し、肺組織が線維化して呼吸機能が低下する職業病の代表疾患です。アスベスト(石綿)は天然に産する繊維状けい酸塩鉱物であり、その繊維が肺に沈着することで石綿肺(アスベスト肺)という典型的なじん肺を引き起こします。さらに肺がんや悪性胸膜中皮腫の原因にもなり、じん肺法や石綿障害予防規則による規制対象となっています。

選択肢考察

  1. × 1.  フロン

    フロンはフッ素・塩素を含むハロゲン化炭化水素の総称で、オゾン層破壊や地球温暖化の原因物質。ヒトの肺に蓄積してじん肺を起こす物質ではない。

  2. 2.  アスベスト

    繊維状けい酸塩鉱物で、長期吸入により石綿肺(じん肺の一型)、肺がん、悪性中皮腫を引き起こす。建材の解体作業などでの曝露が問題となる。

  3. × 3.  ダイオキシン類

    主に廃棄物の焼却過程で生じる環境汚染物質。発がん性や内分泌撹乱作用が指摘されるが、じん肺の原因物質ではない。

  4. × 4.  ホルムアルデヒド

    建材の接着剤などに含まれる揮発性有機化合物で、シックハウス症候群の代表的原因。気道刺激や発がん性はあるがじん肺の原因粉じんではない。

じん肺は原因物質により珪肺(遊離珪酸)、石綿肺(アスベスト)、炭坑夫肺(石炭粉じん)などに分類される。職業性の発症が多く、じん肺法では定期健診やじん肺管理区分が定められる。合併症として続発性気管支炎、結核、気胸、肺がんなどがある。アスベストは2006年以降、原則製造・使用が禁止されたが、過去に使用された建材の解体現場での曝露管理が現在の重要課題となっている。

じん肺の原因となる粉じんの種類を問う問題。4つの環境関連物質の性質と代表的な健康被害を区別できるかがポイント。