高齢者は暑さ寒さに弱い?体温調節能低下の仕組み
看護師国家試験 第106回 午前 第8問 / 必修問題 / 人間の特性とライフサイクル
国試問題にチャレンジ
老年期の身体的な特徴で正しいのはどれか。
- 1.尿量の増加
- 2.味覚の感度の向上
- 3.体温調節能の低下
- 4.外来抗原に対する抗体産生の亢進
対話形式の解説
博士
老年期の身体的特徴を整理するぞ。必修・老年看護の最重要テーマじゃ。
アユム
高齢者は夏に熱中症になりやすいですよね。それと関係ありますか?
博士
大いに関係ある。加齢で体温調節能が低下するからじゃ。今回の正解も『体温調節能の低下』じゃな。
アユム
具体的に、どこが衰えるんですか?
博士
3つのメカニズムを押さえよう。①発汗機能の低下、②皮膚血流調節の低下、③骨格筋量減少による熱産生低下。さらに④口渇感の鈍化で水分摂取量も減る。
アユム
暑い時だけじゃなくて、寒い時も弱いんですか?
博士
そう。震え(シバリング)による熱産生が弱く、皮下脂肪の減少で断熱も悪いため、冬は低体温症のリスクも高い。
アユム
尿量は増えるんですか、減るんですか?
博士
総尿量は若年者と同等か減少する。しかし尿濃縮力が落ちて夜間尿量比が増え、夜間頻尿になる。これが転倒リスクとも関係するぞ。
アユム
味覚はどう変わりますか?
博士
舌の味蕾が若年者の約半分に減少するとされ、特に塩味・甘味への感度が低下する。その結果、味が濃いものを好むようになる。
アユム
塩分を摂りすぎると問題ですね。
博士
その通り。高血圧や心不全のリスクが上がる。食事指導では減塩を維持しつつ旨味(だし)・香辛料・酸味で風味を補うのがポイントじゃ。
アユム
免疫はどうですか?
博士
T細胞機能とB細胞の抗体産生が低下し、細胞性免疫が特に衰える。結核の再活性化や帯状疱疹、肺炎球菌感染症が増える理由じゃ。
アユム
ワクチンの効きも悪くなるんですか?
博士
うむ。インフルエンザワクチンの効果は若年者より弱いため、高齢者には高用量・アジュバント付加型が開発されておる。
アユム
他に老年期で押さえるべき変化は?
博士
循環では血管弾性低下で収縮期血圧が上昇し、脈圧が広がる。呼吸では肺活量低下と残気量増加。骨では骨密度低下、感覚では白内障・老視・高音域の難聴が多い。
アユム
薬の効き方も違うと聞きました。
博士
肝代謝酵素活性低下、腎排泄低下、血中アルブミン低下、体内水分減少などで薬物動態が変化する。同じ量でも血中濃度が上がりやすく、副作用が起きやすいのじゃ。
アユム
全部つなげて考えると、看護のポイントが見えてきますね。
博士
そうじゃ。キーワードは『予備能の低下』。正常値でも普段の余裕が少ないため、ちょっとしたストレスで破綻しやすい。看護師の早期発見・予防介入が重要じゃ。
アユム
熱中症対策では、こまめな水分補給と室温管理が大事ですね。
POINT
老年期では加齢に伴い体温調節能が低下し、発汗・皮膚血流調節・熱産生のすべてが衰えるため、暑熱・寒冷ストレスに脆弱となります。他にも尿濃縮力低下による夜間頻尿、味蕾減少による味覚低下、T・B細胞機能低下による抗体産生低下など『すべて下降気味』が基本です。高齢者は恒常性維持の予備能が狭いため、些細なストレスで熱中症・脱水・低体温・感染症重症化へ傾きやすいのが特徴です。看護師は、環境調整・水分補給・予防接種・栄養管理などを通じて、老年期の脆弱性を補う予防的関わりを担います。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:老年期の身体的な特徴で正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。加齢に伴い、自律神経機能や骨格筋量が低下し、体温調節能は低下する。暑い時の発汗は減り、寒い時の皮膚血管収縮や熱産生も弱くなるため、うつ熱(熱中症)や低体温に陥りやすい。老年期には他に、腎機能低下による尿濃縮力低下(夜間頻尿)、味蕾の減少による味覚低下、T細胞機能低下による細胞性免疫の減衰などが生じる。
選択肢考察
-
× 1. 尿量の増加
高齢者は糸球体濾過率(GFR)低下と尿濃縮力低下があり、1日総尿量は概ね減少〜同等だが、夜間尿量比が増え頻尿となる。単純な『尿量増加』とは言えない。
-
× 2. 味覚の感度の向上
加齢により味蕾が減少し、特に塩味・甘味の感度が低下する。味が濃いものを好むようになり、高血圧や糖尿病のリスクとなりうる。
-
○ 3. 体温調節能の低下
発汗機能・皮膚血流調節・震え熱産生が衰えるため、暑熱・寒冷ストレスに脆弱になる。高齢者の熱中症・低体温のリスクの本質である。
-
× 4. 外来抗原に対する抗体産生の亢進
免疫老化により、特にT細胞機能とB細胞の抗体産生が低下する。そのためワクチン応答の低下や感染症の重症化リスクが上がる。
老年期の生理的変化の代表例として、①呼吸:残気量増加・肺活量低下、②循環:血管弾性低下→収縮期高血圧、③腎:GFR低下・夜間多尿、④消化:胃酸分泌低下・嚥下反射低下、⑤感覚:視覚(白内障・老視)・聴覚(高音域から低下)、⑥骨:骨密度低下、⑦造血:貧血傾向、⑧免疫:T細胞機能低下などがある。これらの変化は薬物動態(分布容積・排泄半減期)にも影響するため、老年期の与薬には慎重さが求められる。
老年期の生理機能は全体的に『予備能低下』が特徴。個別の機能変化(体温調節能↓、味覚感度↓、抗体産生↓、尿量↓)を正しく覚える問題。
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