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下痢はカリウムを奪う——腸液の組成から電解質異常を予測する

看護師国家試験 第109回 午後 第15問 / 必修問題 / 徴候と疾患

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第15問

下痢によって生じやすい電解質異常はどれか。

  1. 1.低カリウム血症
  2. 2.高カルシウム血症
  3. 3.高ナトリウム血症
  4. 4.低マグネシウム血症

対話形式の解説

博士 博士

今日は下痢と電解質の関係じゃ。下痢で生じやすい電解質異常を即答できるかの?

サクラ サクラ

脱水のイメージはありますが…電解質となると迷います。

博士 博士

まず腸液の組成を思い出すのがコツじゃ。腸液、特に大腸液はカリウムが豊富。便中Kは血漿の何倍もの濃度になっておる。

サクラ サクラ

じゃあ下痢が続くとカリウムがどんどん失われていくんですね!

博士 博士

その通り。だから答えは低カリウム血症。さらに腸液はHCO₃⁻も豊富だから、下痢では代謝性アシドーシスも一緒に起こる。

サクラ サクラ

低K血症ってどんな症状が出るんですか?

博士 博士

四肢脱力、腸蠕動低下(ひどいと麻痺性イレウス)、心電図でU波が出たりST低下、重症では心室性不整脈を招く。ジギタリスを使っている患者では中毒を誘発するから要注意じゃ。

サクラ サクラ

ナトリウムは下がらないんですか?

博士 博士

下痢ではNaも同時に失われるから、むしろ低Na血症になりやすい。選択肢の『高Na血症』は水分欠乏が主因で、水が飲めない高齢者や尿崩症のときに起こる。

サクラ サクラ

嘔吐の場合はどうなるんですか?

博士 博士

良い質問じゃ。嘔吐は胃液を失うから、HCl喪失で代謝性アルカローシス、K・Clも低下する。下痢=アシドーシス、嘔吐=アルカローシスと対比して覚えるのじゃ。

サクラ サクラ

マグネシウムは?

博士 博士

慢性下痢や吸収不良では低Mg血症を起こすが、急性下痢の第一選択の答えにはならない。低Mgは低K・低Caを合併しやすいから、難治性の低Kを見たらMgも測るのが臨床のコツじゃ。

サクラ サクラ

輸液はどうするんですか?

博士 博士

等張性脱水に対して生理食塩水やリンゲル液、そしてKが下がっていればKClを心電図モニター下で投与する。Kは急速静注は絶対禁忌。希釈濃度と速度を守るのじゃ。

サクラ サクラ

下痢患者には脱水だけじゃなくてK補正の視点も大事なんですね。

博士 博士

そう。バイタルだけでなく筋力・腹部所見・心電図・血液ガス・電解質の総合評価が看護アセスメントの要じゃ。

サクラ サクラ

消化液の組成を知ると、症状と治療が一本の線でつながりますね!

POINT

下痢で最も起こりやすい電解質異常は低カリウム血症で、腸液にカリウムが豊富に含まれているため便と一緒に喪失されます。同時に重炭酸も失われて代謝性アシドーシスとなり、ナトリウムも共に失われて等張性〜低張性脱水を呈するのが典型像です。低K血症では四肢脱力・腸蠕動低下・心電図のU波・致死性不整脈などを招き、ジギタリス使用中は中毒のリスクが高まるため、点滴・内服・食事からの慎重なK補正が必要です。嘔吐では胃液喪失のため低Cl・低K・代謝性アルカローシスと酸塩基の方向が逆転する点を対比して覚えると、消化器症状と電解質異常が体系的に理解できます。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:下痢によって生じやすい電解質異常はどれか。

解説:正解は 1 です。腸液(特に小腸・大腸分泌液)はカリウムを豊富に含み、便中K濃度は血漿よりはるかに高い。下痢が続くと大量の水分とともにカリウムが失われ低カリウム血症を呈する。さらに下痢では重炭酸(HCO₃⁻)も失われるため代謝性アシドーシスを合併しやすく、ナトリウムも同時に喪失するため等張性〜低張性脱水となる。臨床では下痢=低K・代謝性アシドーシス・脱水のセットで覚えておく。

選択肢考察

  1. 1.  低カリウム血症

    腸液はKが多いため、下痢による消化液喪失はKの直接喪失につながる。低K血症では四肢脱力・腸蠕動低下(イレウス)・心電図上のU波出現・不整脈などを呈し、重症ではジギタリス中毒の感受性も高まる。

  2. × 2.  高カルシウム血症

    高Ca血症の主因は副甲状腺機能亢進症・悪性腫瘍(PTHrP産生腫瘍、骨転移)・ビタミンD中毒など。下痢で電解質喪失が進んでもCaが上昇することはない。

  3. × 3.  高ナトリウム血症

    下痢ではNaもKと同時に失われ、むしろ低ナトリウム血症に傾きやすい。高Na血症は自由水欠乏(水分摂取不能、尿崩症など)が主因。

  4. × 4.  低マグネシウム血症

    慢性下痢や吸収不良症候群では二次的に低Mg血症を起こすことはあるが、急性下痢で真っ先に現れる代表的電解質異常ではない。低Mgは低Kや低Caを合併しやすい点も押さえる。

下痢時の輸液管理では、等張輸液(生理食塩水・リンゲル液)に加えてK補充を考慮する。心電図モニタリング下で希釈・速度を守って投与するのが原則。嘔吐の場合は胃液喪失のため低Cl・低K・代謝性アルカローシスとなり、下痢とは酸塩基の方向が逆になる点が頻出の対比ポイント。

消化管液の組成から電解質喪失の種類を推測する問題。下痢=低K・代謝性アシドーシス、嘔吐=低K・代謝性アルカローシスの対比を押さえる。