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エイジズムとは?バトラーが名付けた「第三の差別」を知ろう

看護師国家試験 第109回 午後 第56問 / 老年看護学 / 高齢者の理解と生活

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第56問

高齢者に対するエイジズムの説明で適切なのはどれか。

  1. 1.年齢にとらわれないこと
  2. 2.加齢に伴う心身機能の変化
  3. 3.高齢という理由で不当な扱いをすること
  4. 4.老化に関連した遺伝子によって引き起こされる現象

対話形式の解説

博士 博士

今日は老年看護の基本用語、エイジズムについて学ぶぞ。答えは3の「高齢という理由で不当な扱いをすること」じゃ。

アユム アユム

エイジズムって初めて聞きました。どこから来た言葉ですか?

博士 博士

1969年にアメリカの老年医学者ロバート・バトラーが提唱した言葉で、年齢を理由にした偏見・ステレオタイプ・差別を指す。人種差別、性差別に次ぐ「第三の差別」とも呼ばれておる。

アユム アユム

具体的にはどんな場面で起きるんですか?

博士 博士

例えば「もう年だから新しいことは覚えられない」「高齢者だから手術の説明は家族にだけすればいい」といった思い込みで本人の意思決定を軽視する行為じゃな。

アユム アユム

悪気がなくても差別になってしまうんですね…

博士 博士

そうじゃ。「高齢者を守ってあげる」という一見善意にも見える過保護も、肯定的エイジズムとして自立を奪うことがある。

アユム アユム

似ている言葉と混同しそうです。エイジングとは違うんですか?

博士 博士

エイジングは加齢に伴う生理的・生物学的な変化のこと。選択肢2の内容じゃな。エイジズムとは全然違う概念じゃ。

アユム アユム

じゃあエイジレスって?

博士 博士

選択肢1の「年齢にとらわれない」ことで、内閣府が推進するエイジレスライフのこと。年齢で自分を縛らず活動的に生きる前向きな考え方じゃ。

アユム アユム

4の遺伝子による老化は?

博士 博士

それは「細胞老化」。テロメア短縮やDNA損傷応答で細胞分裂が止まる生物学的現象で、社会概念のエイジズムとは別物じゃ。

アユム アユム

医療現場でエイジズムを防ぐにはどうしたら?

博士 博士

まず自分の中のバイアスに気づくこと。「年齢」ではなく「目の前の個人」を見る視点が基本じゃ。意思決定は本人に説明し、本人の価値観を尊重する。

アユム アユム

WHOも関心を寄せているそうですね。

博士 博士

2021年にWHOはエイジズム対策の世界報告書を公表し、教育・法制度・世代間交流による是正を提案しておる。国際的な公衆衛生課題じゃ。

アユム アユム

言葉の意味を知ることが、無意識の差別に気づく第一歩なんですね。

博士 博士

その通り。看護倫理の中核にある「個別性の尊重」を実践するためにも、エイジズムという概念を覚えておいてほしいのじゃ。

アユム アユム

日々のケアを振り返るきっかけになりました。

POINT

エイジズムは1969年にアメリカの老年医学者ロバート・バトラーが提唱した概念で、年齢を理由とした偏見・ステレオタイプ・差別を指し、特に高齢者を対象とした不当な扱いを意味します。人種差別・性差別に次ぐ「第三の差別」と呼ばれ、医療・介護現場でも「もう年だから」「認知症だから」といった無意識の決めつけとして現れることがあります。類似用語のエイジング(加齢変化)、エイジレス(年齢にとらわれない生き方)、細胞老化(生物学的な老化)とは明確に区別して理解する必要があります。看護師は高齢者を一人の人格として尊重し、年齢ではなく個別の価値観や能力に基づいて意思決定支援を行うことが、エイジズム克服への実践的な一歩となります。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:高齢者に対するエイジズムの説明で適切なのはどれか。

解説:正解は3の「高齢という理由で不当な扱いをすること」である。エイジズム(ageism)は1969年にアメリカ国立老化研究所の初代所長ロバート・N・バトラーが提唱した概念で、年齢を理由にした偏見・ステレオタイプ・差別を指す。特に高齢者に対して「役に立たない」「頑固」「学習能力がない」といった画一的なイメージで判断し、医療・雇用・社会参加の機会を奪う行為が含まれる。人種差別(racism)・性差別(sexism)と並ぶ「第三の差別」とされ、医療・看護現場でも治療方針決定や意思決定支援の場面で無自覚に現れることがあり、看護師は自らの偏見を自覚し個別性を尊重する態度が求められる。

選択肢考察

  1. × 1.  年齢にとらわれないこと

    年齢にとらわれず自分らしく生きる考え方は「エイジレス」「エイジレスライフ」と呼ばれ、内閣府も高齢者の生き方として推進している。エイジズムとは逆の概念である。

  2. × 2.  加齢に伴う心身機能の変化

    加齢に伴う心身の生理的変化は「エイジング(老化)」と呼ぶ。エイジズムとは語感が似ているが意味は全く異なる。

  3. 3.  高齢という理由で不当な扱いをすること

    エイジズムの定義そのもの。バトラーは「高齢者を年齢だけで一つの型にはめ、組織的に差別すること」と定義した。医療・介護現場でも注意が必要な概念。

  4. × 4.  老化に関連した遺伝子によって引き起こされる現象

    遺伝子やテロメア短縮などに基づく細胞レベルの老化現象は「細胞老化(cellular senescence)」と呼ばれる。社会的・心理的概念であるエイジズムとは別の生物学的概念である。

エイジズムには「肯定的エイジズム」(高齢者を弱者として過保護にする)と「否定的エイジズム」(能力を低く見積もり排除する)があり、後者がより顕在化しやすい。医療現場では「もう年だから手術は無理」「認知症だから説明しても分からない」といった発言が無意識のエイジズムとなりうる。看護倫理においては、年齢によらず個々の価値観・能力・意思を尊重すること、高齢者の自立を支援し意思決定に参画させることが重要。WHOも2021年にエイジズム対策の世界報告書を公表している。

エイジズム=年齢による差別という定義の理解を問う問題。似た用語(エイジレス・エイジング・細胞老化)との区別が鍵。