外国人患者への医療通訳者の活用
看護師国家試験 第104回 午後 第117問 / 看護の統合と実践 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(37歳、女性)は、アジアの出身で1か月前に日本人の夫(40歳)と娘(12歳)とともに日本に移住した。母国語以外に簡単な言葉であれば日本語と英語は理解できる。Aさんは、胸のしこりに気付き1週前に受診し、検査の結果、乳癌(breast cancer)と診断された。 今後の治療について説明を受けるため外来を受診する予定である。夫から「仕事が忙しく説明に立ち会えない。妻は日本語が上手く話せないがどうしたらいいですか」と電話があった。 このときの夫への対応で最も適切なのはどれか。
- 1.電話で治療について説明をする。
- 2.英語での説明を医師に依頼すると伝える。
- 3.母国語の医療通訳者について情報提供する。
- 4.日本語を話せる娘に通訳を依頼するよう伝える。
対話形式の解説
博士
Aさんは日本に来て1か月、簡単な日本語と英語しかできぬのじゃ。乳癌の治療説明をどうする?
サクラ
英語が分かるなら英語で説明してもらうのはどうですか?
博士
甘いのう。Aさんは英語も「簡単な言葉なら」のレベルじゃ。乳癌の治療内容は複雑で専門用語も多い。
サクラ
では電話で詳しく説明するのは?
博士
電話では本人確認も難しく、表情も見えん。理解度の確認もできず、守秘義務違反のリスクもある。
サクラ
娘さんが日本語を話せるそうですが…
博士
12歳の子に医学用語の通訳をさせてよいか?
サクラ
あ、心理的負担が大きいですね。母親の重病ですし、誤訳のリスクもあります。
博士
その通りじゃ。家族特に未成年の通訳は国際的にも推奨されておらん。
サクラ
すると、母国語の医療通訳者を紹介するのが最善ですね。
博士
医療通訳者は医療用語と異文化の知識を持ち、中立的に自己決定を支援する専門職じゃ。
サクラ
電話通訳や遠隔ビデオ通訳もあるのですよね。
博士
自治体の派遣事業もある。情報提供して本人と家族が選べるようにするのが看護師の役割じゃ。
サクラ
言語だけでなく宗教や文化への配慮も必要ですね。
博士
多文化看護の基本じゃ。患者の権利と尊厳を守ることが何より大切じゃぞ。
POINT
在留外国人患者の医療において、複雑な治療説明には専門訓練を受けた医療通訳者の活用が標準です。電話説明は本人確認やインフォームド・コンセントの観点から不適切で、家族特に未成年への通訳依頼は誤訳と心理的負担のため避けるべきです。看護師は通訳サービスの情報提供を行い、患者の自己決定権を保障する役割を担います。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(37歳、女性)は、アジアの出身で1か月前に日本人の夫(40歳)と娘(12歳)とともに日本に移住した。母国語以外に簡単な言葉であれば日本語と英語は理解できる。Aさんは、胸のしこりに気付き1週前に受診し、検査の結果、乳癌(breast cancer)と診断された。 今後の治療について説明を受けるため外来を受診する予定である。夫から「仕事が忙しく説明に立ち会えない。妻は日本語が上手く話せないがどうしたらいいですか」と電話があった。 このときの夫への対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 3 の母国語の医療通訳者についての情報提供です。Aさんは日本語も英語も簡単な内容しか理解できないため、乳癌治療という重要な医療情報を正確に理解し意思決定するには母国語での通訳が必須です。専門訓練を受けた医療通訳者は専門用語を正しく訳し、本人の自己決定を支援する立場であり、最も適切な情報提供となります。
選択肢考察
-
× 1. 電話で治療について説明をする。
本人確認や守秘義務、表情や身振りで補えない非言語情報の欠落、理解度の確認困難など、電話での重要な医療説明には多くの問題があります。インフォームド・コンセントの原則からも不適切です。
-
× 2. 英語での説明を医師に依頼すると伝える。
Aさんは英語も簡単な言葉しか理解できないため、乳癌治療という複雑な内容を英語で十分に理解することは困難です。理解の不確実な言語での説明は誤解や不利益な選択につながります。
-
○ 3. 母国語の医療通訳者について情報提供する。
医療通訳者は医療用語と多文化背景の知識を持ち、患者の自己決定を中立的に支援する専門職です。母国語での正確な情報提供は患者の権利でもあり、本人の理解と納得に基づく意思決定を実現します。
-
× 4. 日本語を話せる娘に通訳を依頼するよう伝える。
12歳の娘に医学的な専門用語を訳すのは困難で、母親の重病の通訳という役割は心理的負担が極めて大きいです。家族通訳は誤訳のリスクと未成年への侵襲性から国際的に推奨されません。
在留外国人の医療では言語と文化の壁が大きな課題で、医療通訳者の活用が重要です。電話通訳サービスや遠隔ビデオ通訳、自治体の通訳派遣事業など多様な選択肢があります。家族とくに子どもの通訳依頼は誤訳・心理的負担・プライバシー侵害の観点から避けるべきです。多文化対応では宗教、ジェンダー、家族構造など文化的配慮も求められます。
外国人患者への重要な医療情報提供における言語的支援の最適解を問う問題です。医療通訳者の意義を理解しているかが問われます。
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