白色帯下と下腹部痛からSTDを鑑別する
看護師国家試験 第105回 午前 第105問 / 母性看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(20歳、女性、大学生)は、最近、同じ大学に所属するパートナー(21歳、男性)との性交後に白色帯下が増えた。外陰部に腫瘤はみられず搔痒感や痛みはないが、時々、下腹部に痛みがあった。Aさんは性感染症〈STD〉(sexually transmitted disease)を疑い、1人で産婦人科クリニックを受診した。診察時の体温36.8℃、脈拍62/分であった。 Aさんの状態に最もあてはまる性感染症〈STD〉(sexually transmitted disease)はどれか。
- 1.性器ヘルペス(genital herpes)
- 2.尖圭コンジローマ(condyloma acuminatum)
- 3.腟トリコモナス症(vaginal tricomonas infection)
- 4.性器クラミジア感染症(genital chlamydiosis)
対話形式の解説
博士
今回は20歳女子大生Aさん、性交後に白色帯下が増え時々下腹部痛、外陰部症状はないという相談じゃ。
サクラ
体温も36.8℃、脈拍62回/分と落ち着いているんですね。該当する性感染症はどれですか?
博士
正解は4の『性器クラミジア感染症』じゃ。日本で最も多いSTDで、女性では自覚症状が乏しいのが特徴なんじゃ。
サクラ
具体的にはどんな症状が出るんですか?
博士
白色〜淡黄色の帯下増加、軽度の下腹部痛、不正出血などじゃな。外陰部の皮膚所見や強い痛みは通常みられん。Aさんの訴えとぴたりと合うじゃろう?
サクラ
選択肢1の性器ヘルペスはどうして違うんですか?
博士
単純ヘルペスウイルス(HSV1・2)による感染で、外陰部に有痛性の水疱や潰瘍を作る。初感染時は歩行困難になるほど痛むから、『痛みなし』の本例とは合わんのじゃ。
サクラ
2の尖圭コンジローマは?
博士
HPV6型・11型が原因で、鶏冠状や乳頭状の腫瘤が外陰・腟入口部・肛門周囲に出る。Aさんは『外陰部に腫瘤なし』と明記されておるから除外じゃ。
サクラ
3の腟トリコモナス症はどうでしょう?
博士
原虫感染でな、泡沫状で悪臭のある黄緑色帯下と強い掻痒感・灼熱感が特徴じゃ。白色帯下で掻痒なしの本例とは帯下の性状も違う。
サクラ
クラミジアの検査や治療はどうするんですか?
博士
子宮頸管擦過や尿を用いた核酸増幅検査(PCRなど)で診断し、治療はアジスロマイシン1g単回投与かドキシサイクリン100mg×2回×7日が第一選択じゃ。
サクラ
放っておくとどうなりますか?
博士
上行感染で卵管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)を起こし、卵管性不妊や子宮外妊娠、慢性骨盤痛の原因となる。若年女性の不妊原因として重要なんじゃ。
サクラ
パートナーの治療も必要ですよね?
博士
そのとおりじゃ。片方だけ治しても性交で再感染する『ピンポン感染』が起きるから、必ず同時治療が原則じゃ。
サクラ
他のSTDの合併もチェックした方がよさそうですね。
博士
うむ、淋菌やHIV、梅毒などは合併率が高いから、同時スクリーニングが推奨されておる。
サクラ
女性で無症状が多いというのが怖いですね…
博士
そうじゃな、だから若年層でのスクリーニングや正しい知識、コンドーム使用の啓発がとても大切なんじゃ。
POINT
性交後の白色帯下増加と時々の下腹部痛、外陰部症状のない20歳女性の訴えからSTDを鑑別する問題です。自覚症状が乏しく帯下増加と下腹部痛が主徴となるのは性器クラミジア感染症で、放置するとPIDや卵管性不妊の原因となるため早期診断・パートナー同時治療が重要です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(20歳、女性、大学生)は、最近、同じ大学に所属するパートナー(21歳、男性)との性交後に白色帯下が増えた。外陰部に腫瘤はみられず搔痒感や痛みはないが、時々、下腹部に痛みがあった。Aさんは性感染症〈STD〉(sexually transmitted disease)を疑い、1人で産婦人科クリニックを受診した。診察時の体温36.8℃、脈拍62/分であった。 Aさんの状態に最もあてはまる性感染症〈STD〉(sexually transmitted disease)はどれか。
解説:正解は 4 です。性器クラミジア感染症はChlamydia trachomatisによる国内最多の性感染症で、女性では自覚症状が乏しいまま進行し、子宮頸管炎・卵管炎・骨盤内炎症性疾患(PID)を経て卵管性不妊の原因となります。症状は白色〜淡黄色の帯下増加、軽度の下腹部痛、不正性器出血などで、外陰部の発疹・腫瘤・掻痒感を伴わないのが特徴です。本例の『白色帯下増加+時々下腹部痛、外陰部症状なし』はクラミジア感染症の典型像です。
選択肢考察
-
× 1. 性器ヘルペス(genital herpes)
単純ヘルペスウイルス感染による外陰部の有痛性水疱・潰瘍が特徴で、強い疼痛を伴います。本例には合致しません。
-
× 2. 尖圭コンジローマ(condyloma acuminatum)
HPV6型・11型による鶏冠状・乳頭状の腫瘤が外陰部・腟・肛門周囲に生じます。外陰部腫瘤がない本例には合致しません。
-
× 3. 腟トリコモナス症(vaginal tricomonas infection)
泡沫状で悪臭のある黄緑色帯下と強い外陰部掻痒・灼熱感が特徴です。白色帯下で掻痒のない本例とは異なります。
-
○ 4. 性器クラミジア感染症(genital chlamydiosis)
女性では無症状〜軽症が多く、白色帯下増加と軽度下腹部痛を呈するのが典型で、本例の所見に最も合致します。
クラミジアの診断は子宮頸管擦過検体や尿を用いた核酸増幅検査(PCR、SDA、TMA)が標準で、治療はアジスロマイシン単回投与あるいはドキシサイクリン7日間内服が第一選択です。無症状のまま進行するとPIDから卵管性不妊・子宮外妊娠の原因となり、パートナーとの同時治療が必須です。
症状パターンから該当する性感染症を鑑別する問題で、クラミジア感染症の『無症状〜軽症、白色帯下』という特徴を問うています。
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