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DMD児と8歳のお姉ちゃん 「しがみつき」の裏にあるSOSに気づく

看護師国家試験 第106回 午前 第67問 / 小児看護学 / 慢性疾患・障害のある子どもと家族への看護

国試問題にチャレンジ

106回 午前 第67問

A君(6歳、男児)は、父母と姉との4人で暮らしている。3歳児健康診査で運動機能の発達の遅延を指摘され、5歳のときにDuchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィー( Duchenne muscular dystrophy )の確定診断を受けた。現在は、床からの立ち上がり動作に介助が必要である。見守りが必要ではあるが、室内の歩行は自立している。在宅支援サービスは利用していない。A君の外来受診時に母親から「最近、Aの世話をしていると、8歳の姉が私にしがみついて離れないので困ります」と看護師に相談があった。 このときの看護師の対応で最も優先されるのはどれか。

  1. 1.姉の小学校の養護教諭に家庭訪問を依頼する。
  2. 2.姉にA君の歩行の見守りをさせるよう勧める。
  3. 3.短期入所を利用して父母と姉とで旅行するよう勧める。
  4. 4.居宅介護を利用して母が姉と関わる時間を確保することを提案する。

対話形式の解説

博士 博士

今日はA君6歳、Duchenne型筋ジストロフィーの事例じゃ。姉は8歳、母がA君の世話をしていると姉がしがみついて離れない、と母からの相談じゃ。

サクラ サクラ

DMDの症状ってどんな感じなんですか?

博士 博士

DMDはX連鎖劣性遺伝でジストロフィン遺伝子の変異が原因じゃ。男児に発症し、5歳前後から歩行障害が明らかになり、床からの立ち上がりで「登攀性起立(ガワーズ徴候)」が見られる。10歳前後で車椅子生活になり、20歳前後で呼吸・心機能低下が問題になる。

サクラ サクラ

A君も床からの立ち上がりに介助が必要なんですよね。進行期の初期ですね。

博士 博士

うむ。介護は年々重くなる。母の負担が増えるほど、姉の感じる「置いてきぼり感」も強まる。

サクラ サクラ

姉のしがみつきは、母親を求めるサインなんですね。

博士 博士

その通り。これを「シブリング(きょうだい)の反応」と呼ぶ。退行、しがみつき、学校での問題行動、身体症状など、様々な形で出ることがある。

サクラ サクラ

選択肢4「居宅介護を利用して母が姉と関わる時間を確保する」が正解ですか?

博士 博士

うむ。居宅介護は障害福祉サービスで、ヘルパーが家庭に入ってA君の介護を代わってくれる。その間に母は姉と買い物に行ったり絵本を読んだりと、関わる時間を継続的に持てる。

サクラ サクラ

選択肢1「養護教諭に家庭訪問」は?

博士 博士

姉のしがみつきは学校由来ではなく家庭内の関係性の問題じゃから、養護教諭が訪問しても根本解決にはならぬ。

サクラ サクラ

選択肢2「姉に歩行の見守りをさせる」は一見よさそうですが…。

博士 博士

これは絶対に勧められぬ。8歳の姉に見守りの責任を負わせると、転倒した時に罪悪感を背負うことになる。そもそも姉が求めているのは介護役割ではなく「母の関心」じゃ。

サクラ サクラ

ヤングケアラーの話ともつながりますね。

博士 博士

よく知っておる。近年きょうだい児が介護役割を担わされすぎる問題が注目されており、国も支援を進めておる。

サクラ サクラ

選択肢3「短期入所で父母と姉で旅行」は?

博士 博士

一時的に姉のニードは満たせても、A君を家族から切り離すことになる。家族みんなで暮らしながら解決する方が望ましい。

サクラ サクラ

確かに、継続可能な支援の方がいいですね。

博士 博士

大切なのは、きょうだいも一人の子どもとして尊重されるべきということじゃ。病気の子の世話に偏るあまり、きょうだいの発達や心理が後回しにならないよう、家族全員を視野に入れた支援が必要になる。

サクラ サクラ

看護師はそうした視点を持って、サービスの提案までつなげるんですね。

博士 博士

うむ。居宅介護・短期入所・訪問看護・児童発達支援など、使える資源は意外と多い。情報を届けるのも看護師の役割じゃ。

POINT

慢性疾患を持つ子どもの家族支援では、患児本人だけでなく親・きょうだい全体のウェルビーイングに目を向けることが欠かせません。きょうだい(シブリング)は親の関心が病児に集中することで不安や孤独を感じやすく、しがみつきや退行などの形でSOSを発します。本事例では居宅介護を導入して母の介護負担を軽減し、母が姉と関わる時間を継続して確保することが最も適切な支援です。学校への依頼や姉への介護役割付与は根本解決にならず、短期入所も一時的な対応にとどまります。Duchenne型筋ジストロフィーのような進行性疾患では、長期的・包括的な家族支援の視点が看護の質を決めます。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:A君(6歳、男児)は、父母と姉との4人で暮らしている。3歳児健康診査で運動機能の発達の遅延を指摘され、5歳のときにDuchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィー( Duchenne muscular dystrophy )の確定診断を受けた。現在は、床からの立ち上がり動作に介助が必要である。見守りが必要ではあるが、室内の歩行は自立している。在宅支援サービスは利用していない。A君の外来受診時に母親から「最近、Aの世話をしていると、8歳の姉が私にしがみついて離れないので困ります」と看護師に相談があった。 このときの看護師の対応で最も優先されるのはどれか。

解説:正解は 4 の「居宅介護を利用して母が姉と関わる時間を確保することを提案する」です。慢性疾患を持つ子どものきょうだい(シブリング)は、親の関心が患児に集中することで愛情不足や不安を感じやすく、しがみつき、退行、学校での問題行動などのサインを出すことがあります。本事例では8歳の姉のしがみつきは「母親との関わりを求めるサイン」であり、根本的な解決には姉と母親がゆったり関わる時間の確保が必要です。居宅介護(障害福祉サービス)を導入して母親の介護負担を軽減することで、母が姉と向き合う時間を持てるようにする支援が最も適切です。

選択肢考察

  1. × 1.  姉の小学校の養護教諭に家庭訪問を依頼する。

    姉のしがみつきの原因は家庭内の母子関係の変化であり、学校由来の問題ではない。養護教諭の家庭訪問で根本的に解消するものではない。

  2. × 2.  姉にA君の歩行の見守りをさせるよう勧める。

    8歳の姉に見守り役を負わせることは、転倒時の責任や心理的負担を背負わせることにつながる。さらに姉が求めているのは介護役割ではなく母親との関わりであり、逆効果となる恐れが大きい。

  3. × 3.  短期入所を利用して父母と姉とで旅行するよう勧める。

    一時的に姉のニードを満たせても、A君を家族から切り離す形になり、姉弟関係やA君の心理に影響を及ぼしかねない。長期的・根本的な解決にはなりにくい。

  4. 4.  居宅介護を利用して母が姉と関わる時間を確保することを提案する。

    障害福祉サービスの居宅介護を導入して母の介護負担を軽減すれば、母親が姉と関わる時間を継続的に確保できる。家族全員で暮らしながら問題解決につなげられるため、最も適切。

Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)はX連鎖劣性遺伝でジストロフィン遺伝子の変異により進行性筋力低下を示す疾患で、通常5歳前後で歩行障害、10歳前後で歩行困難、20歳前後で呼吸・心機能低下が問題となる。家族への支援ではレスパイト、居宅介護、児童発達支援、訪問看護、学校連携などが組み合わされる。きょうだい支援(シブリングサポート)は近年注目される重要テーマで、親の意識と専門職の介入が鍵となる。

慢性疾患児のきょうだいに生じる行動変化を「母親との関わりを求めるサイン」と捉え、根本解決となる支援策を選ぶ問題。一時的対応ではなく継続可能な支援が選ばれる。