急性中毒救急の初期対応
看護師国家試験 第103回 午後 第47問 / 成人看護学 / 急性期・救急・クリティカルケア
国試問題にチャレンジ
Aさん(26歳、男性)は、大量服薬による急性中毒が疑われ、午後9時30分に救急搬送された。呼吸状態と循環動態に異常はないが、意識は低下している。付き添って来たAさんの母親は「午後8時に夕食を終えて息子は部屋に戻りました。午後9時にお風呂へ入るよう声をかけに部屋に行ったら、倒れていたんです。息子はうつ病(depression)で通院中でしたが、最近は症状が落ち着いていました」と話す。 このときの対応で適切なのはどれか。
- 1.気管内挿管を行う。
- 2.咽頭を刺激して吐かせる。
- 3.胃酸分泌抑制薬を投与する。
- 4.Aさんの母親にどんな薬を内服していたかを尋ねる。
対話形式の解説
博士
今日は大量服薬による急性中毒の患者への対応じゃ。Aさんは26歳男性、うつ病で通院中、呼吸と循環は安定しておるが意識が低下しておる。
サクラ
博士、まず何をすべきですか?
博士
ABCの安定化が最優先じゃが、本症例では呼吸も循環も安定しておるからのう。
サクラ
では情報収集ですか?
博士
その通り。正解は4番、母親に内服薬の種類を尋ねることじゃ。原因物質が分からねば適切な治療が選べんからな。
サクラ
1番の気管内挿管はどうですか?
博士
今は呼吸が安定しておるから不要じゃ。意識レベルがさらに低下し気道閉塞のリスクが出れば検討する。
サクラ
2番の咽頭刺激で吐かせるのは?
博士
絶対にダメじゃ。意識低下があると吐物を誤嚥して窒息する危険が高い。今は催吐法自体が標準から外れておるんじゃよ。
サクラ
3番の胃酸分泌抑制薬は?
博士
これも急性中毒治療では使わん。必要なのは活性炭投与や拮抗薬じゃ。
サクラ
拮抗薬にはどんなものがありますか?
博士
ベンゾジアゼピンにはフルマゼニル、オピオイドにはナロキソンが代表じゃ。だからこそ薬剤特定が重要なんじゃよ。
サクラ
お薬手帳や空き袋の確認も大切ですね。
博士
うむ、家族から得られる情報すべてが治療方針に直結するぞ。
POINT
急性中毒では呼吸・循環の安定化と並行して原因薬物の特定が不可欠です。本症例では呼吸・循環が安定しているため、母親から薬剤情報を聴取することが最優先となります。意識低下時の催吐は禁忌であり、薬剤に応じた解毒・吸着・拮抗薬を選択します。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん(26歳、男性)は、大量服薬による急性中毒が疑われ、午後9時30分に救急搬送された。呼吸状態と循環動態に異常はないが、意識は低下している。付き添って来たAさんの母親は「午後8時に夕食を終えて息子は部屋に戻りました。午後9時にお風呂へ入るよう声をかけに部屋に行ったら、倒れていたんです。息子はうつ病(depression)で通院中でしたが、最近は症状が落ち着いていました」と話す。 このときの対応で適切なのはどれか。
解説:正解は4です。急性中毒の救急対応ではバイタルサインの安定化と並行して原因物質の特定が極めて重要です。Aさんは呼吸・循環は安定しているため、まず母親から内服薬の種類・量・服用時刻などを聴取し、それに応じた解毒・吸着・拮抗薬の選択や活性炭投与の判断につなげます。
選択肢考察
-
× 1. 気管内挿管を行う。
誤った対応です。呼吸状態に異常がないため気管内挿管の適応はありません。意識レベルがさらに低下したり気道閉塞が生じた場合に検討します。
-
× 2. 咽頭を刺激して吐かせる。
誤った対応です。意識低下時に催吐すると吐物の誤嚥・窒息リスクが高く、現在は催吐法そのものが急性中毒治療の標準から外れています。
-
× 3. 胃酸分泌抑制薬を投与する。
誤った対応です。急性中毒の初期対応で胃酸分泌抑制薬は使用しません。原因薬物に応じた拮抗薬や吸着剤、必要時は胃洗浄が選択されます。
-
○ 4. Aさんの母親にどんな薬を内服していたかを尋ねる。
正しい対応です。原因薬物の特定が治療方針決定の鍵となるため、家族から処方薬の種類・量・服用時刻を聴取することが最優先されます。
急性薬物中毒では「気道・呼吸・循環」の評価とともに、薬剤情報・お薬手帳・空き袋の確認が重要です。活性炭投与は服薬から1時間以内が目安、ベンゾジアゼピン中毒にはフルマゼニル、オピオイド中毒にはナロキソンなど拮抗薬があります。
急性中毒患者への初期対応の優先順位と情報収集の重要性を問う問題です。
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