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水だけを大量に飲んで倒れたA君 体の中で何が起きていた?

看護師国家試験 第114回 午後 第27問 / 成人看護学 / 急性期・救急・クリティカルケア

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第27問

A君(15歳、男子)は、蒸し暑い夏の午後に行われたサッカーの試合に出ていた。 A君は試合中に大量の汗をかいて、気分が悪くなったので多量の水道水を飲み、日陰で休んでいたが、突然、意識消失して倒れた。このときのA君の細胞外液のナトリウムイオン濃度と水分量の正常時に対する割合を図に示す。 このときのA君の体液の状態で正しいのはどれか。

A君(15歳、男子)は、蒸し暑い夏の午後に行われたサッカーの試合に出ていた。 A君は試合中に大量の汗をかいて、気分が悪くなったので多量の水道水を飲み、日陰で休んでいたが、突然、意識消失して倒れた。このときのA君の細胞外液のナトリウムイオン濃度と水分量の正常時に対する割合を図に示す。 このときのA君の体液の状態で正しいのはどれか。
  1. 1.細胞内液は減少している。
  2. 2.血漿浸透圧は上昇している。
  3. 3.循環血液量は減少している。
  4. 4.ヘマトクリットは低下している。

対話形式の解説

博士 博士

今日はスポーツ中の体液変動について学ぶぞ。15歳のA君は大量に汗をかいて、水道水だけをたくさん飲んだら倒れてしまった。何が起こったと思う?

サクラ サクラ

汗で水分が失われたから、水を飲めばいいと思ったんですけど…逆効果だったんですか?

博士 博士

鋭いところに気づいたな。汗にはNa⁺も含まれるから、水と一緒にナトリウムも失われている。そこに水だけを補給するとどうなるかの?

サクラ サクラ

あ、ナトリウム濃度がどんどん薄まってしまう…?

博士 博士

その通りじゃ。細胞外液のNa⁺濃度が下がり、血漿浸透圧が低下する。これが今回の図が示している「低張性脱水」じゃ。

サクラ サクラ

浸透圧が下がると、水はどう動くんですか?

博士 博士

水は浸透圧の高いほうへ移動する性質がある。だから水は細胞外から細胞内へ動き、細胞内液は増える。

サクラ サクラ

じゃあ細胞外液はますます減るんですね。血管の中も?

博士 博士

そうじゃ。血管内の血漿量も減るので、循環血液量が減少する。これが意識消失や低血圧の原因じゃ。

サクラ サクラ

脳の細胞も水を取り込むんですよね?

博士 博士

そう、脳細胞が膨れて脳浮腫になり、頭痛・嘔吐・痙攣・意識障害を起こす。これが「水中毒」と呼ばれる状態じゃ。

サクラ サクラ

ヘマトクリットはどうなりますか?

博士 博士

血漿量が減るのに対し、赤血球の数はほぼ変わらない。だからヘマトクリットは相対的に上昇するのじゃ。

サクラ サクラ

ということは、選択肢の「ヘマトクリットは低下している」は誤りなんですね。

博士 博士

その通り。脱水では基本的にヘマトクリットは上がる、と覚えておくとよいぞ。

サクラ サクラ

A君のような状況を防ぐにはどうすればよかったんですか?

博士 博士

Na⁺と糖を含む経口補水液やスポーツドリンクを少しずつ飲むことじゃ。水だけを大量に飲むのは厳禁。とくに高温多湿環境では、塩分摂取が命を守る。

サクラ サクラ

水分補給って、量よりも中身が大事なんですね。

博士 博士

その通り。看護師として、患者・家族・地域の人にこういう知識を伝えることも大切な役割じゃ。

POINT

A君の状態は、発汗によるNa⁺喪失に加え、水のみを多量に補給したことで起きた低張性脱水(水中毒)です。細胞外液のNa⁺濃度が低下して血漿浸透圧が下がると、水が細胞外から細胞内へ移動し、循環血液量はさらに減少して意識消失に至ります。脳細胞の浮腫が意識障害の主因であり、ヘマトクリットは血漿量減少のため上昇する点も重要です。スポーツや高温環境下では、Na⁺と糖を含む経口補水液やスポーツドリンクの摂取が推奨され、水分補給は「量だけでなく成分」が決め手になります。本症例は、看護師が現場で熱中症予防や水分管理の指導を行う際の重要な学習素材です。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:A君(15歳、男子)は、蒸し暑い夏の午後に行われたサッカーの試合に出ていた。 A君は試合中に大量の汗をかいて、気分が悪くなったので多量の水道水を飲み、日陰で休んでいたが、突然、意識消失して倒れた。このときのA君の細胞外液のナトリウムイオン濃度と水分量の正常時に対する割合を図に示す。 このときのA君の体液の状態で正しいのはどれか。

解説:正解は 3 です。発汗ではNa⁺と水が同時に失われるが、水だけを多量に補給したことで細胞外液中のNa⁺は補われず、水分量に比してNa⁺濃度が相対的に低下した。図でも水分量よりNa⁺濃度の低下が大きいことが読み取れ、これは低張性脱水(低Na血症を伴う脱水)の状態である。血漿浸透圧が低下するため、水は浸透圧の高い細胞内へ移動し、細胞内液が増加する一方で、細胞外液(間質液+血漿)が減少し、循環血液量が減少する。脱水と低Na血症の合併が意識消失の原因と考えられる。

選択肢考察

  1. × 1.  細胞内液は減少している。

    血漿浸透圧の低下により、水分は細胞外から細胞内へと移動する。その結果、細胞内液はむしろ増加し、脳細胞では浮腫を起こして意識障害につながる。

  2. × 2.  血漿浸透圧は上昇している。

    Na⁺喪失と低張水の大量摂取により細胞外液中のNa⁺濃度が低下しているため、血漿浸透圧は上昇ではなく低下している。

  3. 3.  循環血液量は減少している。

    発汗で細胞外液が失われたうえ、補給された水が細胞内へ移動するため、血管内を含む細胞外液量がさらに減少する。結果として循環血液量が減少し、低血圧や意識消失が生じる。

  4. × 4.  ヘマトクリットは低下している。

    循環血漿量が減少する一方で赤血球数はほぼ変わらないため、ヘマトクリット(血液中の赤血球の割合)は相対的に上昇する。

脱水は失われる成分の比率により等張性(NaとHRが同程度)、高張性(水のほうが多く失われる、いわゆる水欠乏型)、低張性(Naが多く失われる、塩分欠乏型)に分類される。本症例のように発汗後に水だけを補給するケースは「水中毒」とも呼ばれ、低Na血症から脳浮腫、痙攣、意識消失へと進行する危険な病態である。スポーツ現場ではNaを含む経口補水液やスポーツドリンクの補給が推奨される。

発汗後に水のみを補給した場合の体液動態を、Na濃度・浸透圧・細胞内外の水移動と関連づけて理解できるかを問う応用問題。