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侵襲に立ち向かう体—急性期の生体反応

看護師国家試験 第114回 午前 第47問 / 成人看護学 / 急性期・救急・クリティカルケア

国試問題にチャレンジ

114回 午前 第47問

急性期の患者に起きる生体反応で正しいのはどれか。

  1. 1.エネルギー代謝が低下する。
  2. 2.蛋白質の同化が異化を上回る。
  3. 3.カテコールアミンの分泌が亢進する。
  4. 4.抗利尿ホルモン<ADH>の分泌が低下する。

対話形式の解説

博士 博士

今回は急性期の生体反応じゃ。手術や外傷、感染で身体に侵襲が加わると、体内では何が起こると思う?

サクラ サクラ

えっと、ストレスホルモンが出てくるんですよね?

博士 博士

その通り。ストレス反応の主役はカテコールアミンとコルチゾールじゃ。視床下部から指令が出て、交感神経―副腎髄質系と下垂体―副腎皮質系の2大系統が同時に動き出す。

サクラ サクラ

カテコールアミンって、アドレナリンとノルアドレナリンですか?

博士 博士

そうじゃ。心拍数を上げ、心収縮力を強め、末梢血管を収縮させて血圧を維持する。脳と心臓への血流を最優先で確保するための反応じゃな。

サクラ サクラ

じゃあ脈は速くなって血圧は上がるんですね。

博士 博士

その通り。さらに肝臓の糖新生を促進して血糖を上げ、損傷部位の修復に使うエネルギーを供給する。

サクラ サクラ

エネルギー代謝は低下するんじゃなくて、亢進するんですか?

博士 博士

その通り。安静時エネルギー消費量は通常の1.2〜2倍にもなる。だから栄養管理は侵襲期看護で極めて重要じゃ。

サクラ サクラ

タンパク質はどうなりますか?

博士 博士

ここがポイント。急性期は蛋白異化が同化を大きく上回る。骨格筋を分解してアミノ酸を取り出し、糖新生や急性期蛋白合成、創傷治癒に使う。だから侵襲後は筋肉量が落ちる。

サクラ サクラ

ADHは下がるんですか?上がるんですか?

博士 博士

上がる。出血や疼痛刺激でADH分泌が亢進し、腎集合管で水を再吸収する。結果として尿量が減り、循環血液量を保つ仕組みじゃ。

サクラ サクラ

むしろ尿量は減るんですね。

博士 博士

そう。さらにアルドステロンも亢進して、Na・水の再吸収とK排泄が進む。これらをサードスペースへの体液移動と合わせて理解するのが急性期看護の基本じゃ。

サクラ サクラ

ムーアの分類って聞いたことがあります。

博士 博士

Moore(ムーア)は手術後の生体反応を4相に分けた。第1相が傷害期(術後2〜4日)でカテコールアミン全開、第2相が転換期で利尿期、第3相が筋力回復期で蛋白同化への転換、第4相が脂肪蓄積期じゃ。

サクラ サクラ

時期ごとに観察ポイントが変わるんですね。

博士 博士

その通り。看護師はバイタルサイン、IN/OUTバランス、創部、栄養状態を各相に沿って観察する。過剰な侵襲反応はSIRSや多臓器不全につながるから、早期に異常を捉えることが命を守る。

POINT

侵襲が加わった急性期では、視床下部―交感神経―副腎髄質系と下垂体―副腎皮質系が同時に活性化し、カテコールアミンとコルチゾールが大量に分泌されます。これにより心血管系が駆動されて重要臓器への血流が維持され、エネルギー代謝は亢進、蛋白異化が進み、ADHやアルドステロン分泌により水分・Naが保持されて循環血液量が確保されます。これらは生命維持のための代償反応ですが、過剰な侵襲反応は全身性炎症反応症候群(SIRS)や多臓器不全に進展するリスクを孕みます。看護師はムーアの相分類を踏まえてバイタルサインやIN/OUT、栄養状態を継続的に観察し、回復の各段階で必要なケアを提供することが求められます。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:急性期の患者に起きる生体反応で正しいのはどれか。

解説:正解は 3 です。手術・外傷・感染・熱傷などの侵襲が加わると、生体は恒常性を保つため神経・内分泌系が一斉に活性化します。視床下部―交感神経系―副腎髄質経路が刺激されてカテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)が大量に放出され、心拍数・心拍出量・末梢血管収縮を引き起こして重要臓器への血流を維持します。同時に視床下部―下垂体―副腎皮質系が活性化してコルチゾールが分泌され、糖新生やタンパク異化を促進してエネルギー基質を確保します。これらの反応は侵襲を受けた身体が生命を維持するための代償機構です。

選択肢考察

  1. × 1.  エネルギー代謝が低下する。

    急性期では損傷部位の修復や免疫応答に多くのエネルギーが必要となり、安静時エネルギー消費量は通常の1.2〜2倍に亢進する。低下するのではなく増加する。

  2. × 2.  蛋白質の同化が異化を上回る。

    急性期は逆で、蛋白異化が同化を大きく上回る。骨格筋蛋白が分解されてアミノ酸が動員され、糖新生や急性期蛋白合成、創傷治癒に使われるため筋萎縮が進行する。

  3. 3.  カテコールアミンの分泌が亢進する。

    侵襲により交感神経―副腎髄質系が活性化し、アドレナリン・ノルアドレナリンの分泌が著明に増加する。心血管系を駆動して循環を維持し、血糖を上昇させる中心的なストレスホルモン応答である。

  4. × 4.  抗利尿ホルモン<ADH>の分泌が低下する。

    侵襲時は循環血液量低下や疼痛刺激でADH分泌が亢進し、腎集合管での水再吸収を促進して体液保持を図る。むしろ尿量減少・希釈性低Na血症が問題となる。

Moore(ムーア)は手術侵襲後の生体反応を4相に分類した。第1相(傷害期、術後2〜4日):交感神経・副腎髄質系亢進、カテコールアミン・コルチゾール分泌増、尿量減、糖新生・蛋白異化亢進。第2相(転換期、術後3日目以降数日):神経内分泌反応の沈静化、利尿期、水分動員。第3相(筋力回復期、術後1週〜数週):蛋白同化への転換、創傷治癒進行。第4相(脂肪蓄積期、術後数週〜数か月):体重・脂肪量の回復。看護師はバイタルサイン、in/outバランス、創部、栄養状態などをこの段階に沿って観察する。

急性期における侵襲ストレス反応の神経内分泌・代謝変化を理解し、カテコールアミン亢進・ADH亢進・蛋白異化亢進・代謝亢進という方向性を正しく押さえているかを問う問題。