大動脈瘤破裂後のショック症状を見極める
看護師国家試験 第111回 午前 第43問 / 成人看護学 / 急性期・救急・クリティカルケア
国試問題にチャレンジ
解離性大動脈瘤(dissecting aortic aneurysm)の破裂直後に出血性ショック(hemorrhagic shock)となった患者の症状として正しいのはどれか。
- 1.黄疸
- 2.浮腫
- 3.顔面紅潮
- 4.呼吸不全
対話形式の解説
博士
今日は解離性大動脈瘤が破裂して出血性ショックに陥った患者の症状じゃ。命にかかわる緊急事態じゃよ。
サクラ
解離性大動脈瘤って、大動脈の内膜が裂けて中膜に血液が入り込む状態ですよね。
博士
その通りじゃ。破裂すれば胸腔や腹腔、後腹膜などに大量出血を来し、急速に出血性ショックへ進行する。
サクラ
出血性ショックはどのショックに分類されますか?
博士
循環血液量減少性ショックじゃ。血管内容量が急減して心拍出量が落ち、末梢への酸素供給が不足する。
サクラ
選択肢で正しいのはどれでしょう。
博士
正解は4の呼吸不全じゃ。組織が低酸素になると嫌気性代謝になり、乳酸が蓄積してアシドーシスとなる。それを代償するため頻呼吸になるんじゃ。
サクラ
なるほど、呼吸数が増えるのは体の防御反応なんですね。
博士
そのとおりじゃ。加えて頻脈、皮膚の蒼白と冷感、冷汗、尿量減少、意識レベル低下などもみられる。
サクラ
選択肢1の黄疸はどうしてダメなんですか?
博士
黄疸はビリルビン上昇の所見で、肝胆道疾患や溶血で出る。急性出血直後に出る症状ではないのじゃ。
サクラ
選択肢2の浮腫は?
博士
浮腫は循環血液量が多いまたは血管透過性亢進・低アルブミンで起こる。出血では逆に血管内容量が減るため浮腫は出ない。
サクラ
選択肢3の顔面紅潮は?
博士
ショックでは末梢血管が収縮し皮膚は蒼白になる。紅潮はむしろアナフィラキシーショックなど血管拡張型のショックで出る所見じゃ。
サクラ
ショックの種類によって皮膚所見が違うんですね。
博士
その通り。循環血液量減少性・心原性・閉塞性のショックは蒼白・冷感、血液分布異常性(敗血症性初期・アナフィラキシー・神経原性)は皮膚が温かく紅潮するwarm shockになることがある。
サクラ
看護ではどう動きますか?
博士
気道確保、太い静脈路2本以上、急速輸液と輸血、酸素投与、保温、尿量モニタ、緊急手術準備じゃ。ショックの5Pも忘れず押さえるのじゃ。
POINT
解離性大動脈瘤破裂による出血性ショックは、循環血液量減少により組織が嫌気性代謝に陥り、乳酸アシドーシスの代償として頻呼吸・呼吸不全を来します。皮膚は蒼白・冷感・冷汗を呈し、頻脈、尿量減少、意識障害へ進行します。黄疸や浮腫、顔面紅潮は本病態の急性期所見としては合致しません。迅速な輸液・輸血と緊急手術への連携が救命の鍵です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:解離性大動脈瘤(dissecting aortic aneurysm)の破裂直後に出血性ショック(hemorrhagic shock)となった患者の症状として正しいのはどれか。
解説:正解は 4 です。出血性ショックは大量出血により循環血液量が減少し、組織への酸素供給が不足する循環血液量減少性ショックの代表です。末梢組織が嫌気性代謝に傾き乳酸アシドーシスを来すため、代償性に呼吸数が増加して頻呼吸・呼吸不全が出現します。また心拍出量低下を補うための頻脈、末梢血管収縮による皮膚冷感・蒼白、冷汗、尿量減少、意識障害もみられ、最終的に血圧が低下します。
選択肢考察
-
× 1. 黄疸
黄疸はビリルビン代謝の障害で、肝疾患や胆道閉塞、溶血などで出現します。急性出血性ショックの直後に短時間で生じる所見ではありません。
-
× 2. 浮腫
浮腫は心不全や腎不全、低アルブミン血症などで慢性的に生じます。急性出血では逆に血管内容量が減少するため、ショック直後には現れません。
-
× 3. 顔面紅潮
出血性ショックでは末梢血管が収縮し、皮膚は蒼白・冷感・冷汗を呈します。顔面紅潮はアナフィラキシーや発熱・更年期症状などでみられる所見で逆の変化です。
-
○ 4. 呼吸不全
循環血液量減少による組織低酸素と代謝性アシドーシスを代償するため頻呼吸となり、呼吸不全を来します。出血性ショックに特徴的な初期徴候であり正解です。
ショックの5Pは『Pallor(蒼白)、Prostration(虚脱)、Perspiration(冷汗)、Pulselessness(脈拍微弱)、Pulmonary insufficiency(呼吸不全)』です。解離性大動脈瘤破裂では短時間で大量出血に至るため、緊急手術の適応となります。看護師は気道確保、大口径静脈路確保、輸液・輸血準備、バイタルと尿量の厳重モニタリングを行います。
出血性ショック時に生じる身体所見を、生理学的メカニズム(組織低酸素・代謝性アシドーシスの代償)から理解できているかを問う問題です。
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