在宅看取りと家族への事前説明
看護師国家試験 第103回 午前 第117問 / 看護の統合と実践 / 臨床実践場面における統合的な判断
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(58歳、男性)は、3年前に直腸癌(rectal cancer)と診断され、手術を受けてストーマを造設した。その後Aさんは直腸癌(rectal cancer)を再発し、治療を行ったが効果がなく、腹部の癌性疼痛を訴えたため、疼痛をコントロールする目的で入院していた。Aさんは「自宅で療養したい。痛みは取り除いてほしいが、延命治療は望まない」と在宅療養を希望した。現在、Aさんはオキシコドン塩酸塩を1日2回内服し、食事は食べたいものを少量ずつ食べているが、摂取量が減少している。Aさんの家族は56歳の妻と他県で仕事をしている長女である。 Aさんの傾眠傾向が強まり、時々無呼吸がみられるようになった。Aさんは食事や水分の摂取量は少ないが、疼痛を訴えることはない。Aさんの妻は「できればこのまま自宅でみていきたい」と話している。 Aさんを自宅で看取るための訪問看護師の対応として適切なのはどれか。
- 1.高カロリー輸液の開始を医師と相談する。
- 2.24時間の継続した観察をAさんの家族へ指導する。
- 3.仕事を辞めて介護を行うようにAさんの長女を説得する。
- 4.今後起こりうる身体症状の変化をAさんの家族へ説明する。
対話形式の解説
博士
学生くん、103回午前117問は終末期Aさんの在宅看取りの場面じゃ。傾眠と無呼吸が現れ、妻が自宅でみたいと希望しとる。
サクラ
博士、看取りの場面で訪問看護師は何ができるのですか。
博士
家族が安心して看取りを完遂できるよう、症状経過の説明と精神的支援を行うのが中心じゃ。臨死期には呼吸・循環・意識の変化が順番に現れるからな。
サクラ
では正解は。
博士
正解は4の『今後起こりうる身体症状の変化をAさんの家族へ説明する』じゃ。事前に説明することで急変時のパニックを防ぎ、心の準備と看取りの質を高めるんじゃ。
サクラ
1の高カロリー輸液は。
博士
Aさんは延命治療を望まず本人意思に反する。臨死期の輸液増量は浮腫や気道分泌増加で苦痛を増すから不適切じゃ。
サクラ
2の24時間観察は。
博士
高齢の妻と遠方の長女に24時間観察を強いるのは介護負担が過大で在宅療養の継続を困難にしてしまうぞ。
サクラ
3の長女に仕事を辞めて介護というのは。
博士
家族の就労や生活を医療者が強制的に変えるよう説得するのは越権じゃ。家族の役割分担は本人と家族で決めるべきものじゃ。
サクラ
臨死期にはどんな症状が現れますか。
博士
死前喘鳴、下顎呼吸、チアノーゼ、四肢冷感、尿量減少、傾眠などじゃ。家族にこれらを伝えておけば予期悲嘆を支えられるぞ。
サクラ
看取り後のグリーフケアも大切なのですね。
博士
その通り、看取りは死の直前から死後まで連続したケアじゃ。
POINT
在宅看取りでは臨死期に予測される症状経過を家族に事前説明することが、急変時の混乱防止と心の準備、看取りの質向上に直結します。延命的輸液や24時間観察強制、家族の生活変更の説得は本人意思や家族の負担を無視するため不適切です。家族のペースを尊重した情報共有と精神的支援が原則です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(58歳、男性)は、3年前に直腸癌(rectal cancer)と診断され、手術を受けてストーマを造設した。その後Aさんは直腸癌(rectal cancer)を再発し、治療を行ったが効果がなく、腹部の癌性疼痛を訴えたため、疼痛をコントロールする目的で入院していた。Aさんは「自宅で療養したい。痛みは取り除いてほしいが、延命治療は望まない」と在宅療養を希望した。現在、Aさんはオキシコドン塩酸塩を1日2回内服し、食事は食べたいものを少量ずつ食べているが、摂取量が減少している。Aさんの家族は56歳の妻と他県で仕事をしている長女である。 Aさんの傾眠傾向が強まり、時々無呼吸がみられるようになった。Aさんは食事や水分の摂取量は少ないが、疼痛を訴えることはない。Aさんの妻は「できればこのまま自宅でみていきたい」と話している。 Aさんを自宅で看取るための訪問看護師の対応として適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。Aさんは傾眠と時折の無呼吸がみられ、終末期の臨死期に入りつつあります。妻は『このまま自宅でみていきたい』と看取りの意思を示しており、訪問看護師の役割は家族が安心して看取りを完遂できるよう情報提供と精神的支援を行うことです。臨死期には呼吸変化(チェーンストークス・下顎呼吸)、循環変化(チアノーゼ・四肢冷感)、意識変化(傾眠・反応低下)、分泌物の貯留などが順次出現します。これらを家族にあらかじめ説明しておくと、急変時のパニックを防ぎ、心の準備を促すことができ、看取りの質を高めます。
選択肢考察
-
× 1. 高カロリー輸液の開始を医師と相談する。
Aさんは延命治療を望まず、本人の意思に反します。臨死期の輸液増量は浮腫や気道分泌の増加など苦痛を増す可能性があり、緩和ケアの方針にも反するため不適切です。
-
× 2. 24時間の継続した観察をAさんの家族へ指導する。
高齢の妻と他県在住の長女に24時間観察を求めることは介護負担が過大で、在宅療養の継続を困難にします。家族の生活リズムに配慮した支援が原則です。
-
× 3. 仕事を辞めて介護を行うようにAさんの長女を説得する。
家族構成員の生活や就労を医療者が強制的に変えるよう説得することは越権であり不適切です。家族の役割は本人と家族が話し合って決めるべきです。
-
○ 4. 今後起こりうる身体症状の変化をAさんの家族へ説明する。
臨死期の症状経過を事前に伝えることで、家族の心の準備が整い急変時の混乱を防げます。看取りの質を高め、妻の希望に沿った在宅看取りを実現する適切な対応です。
臨死期の症状はDeath Rattle(死前喘鳴)、下顎呼吸、チアノーゼ、四肢冷感、尿量減少、傾眠などが代表的です。家族への事前説明は『予期悲嘆』を支え、グリーフケアにもつながります。覚え方は『看取りは情報共有・家族のペースを守る』。
終末期在宅看取りにおける家族支援の中核として、予期される症状経過の事前説明の重要性を問う問題です。
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