香水のトラブル、どう伝える?――化学療法と嗅覚過敏のはざまで
看護師国家試験 第109回 午後 第119問 / 看護の統合と実践 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 20 歳、女性、外国籍)は、6 月に来日し、9 月に大学に入学した。入学して 1 週後、Aさんは大学でめまいを起こして座り込み、同じ国から昨年留学生として来日した友人に付き添われ病院の内科外来を受診した。外来では多くの患者が受診を待っており、診察までに時間がかかっていた。Aさんは、日常会話程度の日本語が話せ「身体がだるくて立っていられません」と看護師に伝えた。 Aさんは、急性骨髄性白血病( acute myeloid leukemia )と診断され、血液内科病棟の 2 人部屋に緊急入院になった。病棟看護師が入院オリエンテーションをするため病室を訪れたところ、同室の患者から「Aさんの香水の香りが強いので、つらい」と訴えがあり、看護師もその香りが気になった。 看護師の対応で適切なのはどれか。
- 1.同室の患者に別室への移動を勧める。
- 2.Aさんに香水を洗い流すよう説明する。
- 3.Aさんに香水の使用は医師の許可が必要と説明する。
- 4.Aさんに香りが本人および同室の患者の治療に及ぼす影響を説明する。
対話形式の解説
博士
事例の続きじゃ。Aさんは急性骨髄性白血病と診断され、血液内科病棟の2人部屋に緊急入院となった。
サクラ
入院オリエンテーションに行ったら、同室の患者さんから「Aさんの香水が強くてつらい」と訴えがあったんですね。看護師も香りが気になっている。
博士
この状況で看護師の対応として適切なものを選ぶ。選択肢を整理してみよう。
サクラ
1は同室患者を別室に移動、2はAさんに香水を洗い流すよう説明、3は香水使用には医師の許可が必要と説明、4は香りが本人と同室者の治療に及ぼす影響を説明、ですね。
博士
急性骨髄性白血病の治療で何が始まるかわかるかな。
サクラ
寛解導入化学療法ですよね。シタラビンとアントラサイクリン系の7+3レジメンが標準。強い悪心嘔吐、骨髄抑制、口内炎、脱毛などが出てきます。
博士
その通り。化学療法中の患者は嗅覚過敏になり、強い香りで悪心が増悪しやすい。これはAさん本人にも同室者にも当てはまる。
サクラ
同室の方がもしその方も化学療法中なら、もっと辛いですよね。だから香水は治療そのものに悪影響を及ぼす可能性がある。
博士
うむ。選択肢1の別室移動はどうか。
サクラ
同室患者を移すのは根本解決にならないですね。新しい人が入ってきたらまた同じ問題が起きるし、病棟運営上も簡単ではない。
博士
選択肢2の「洗い流しましょう」は?
サクラ
理由を伝えずに行動だけ指示すると、Aさんとしては押し付けられた感じがして信頼関係を損ねますよね。文化的背景もあるかもしれないし。
博士
その通り。3の「医師の許可が必要」は誤情報。香水は医師の許可事項ではない。
サクラ
となると4が正解ですね。香りが本人の化学療法にも同室者の治療にも影響することを説明し、Aさん自身が納得して控えてもらう。
博士
まさに成人教育的アプローチ、自己決定支援じゃ。理由を理解して自分で選択することで、行動変容が持続しやすい。
サクラ
外国人患者ということも考慮すると、香りの使用習慣や文化を否定しない姿勢が大事ですね。
博士
うむ。文化尊重と医療上の必要性を両立させる。病棟環境としては無香料製品の使用、強い花や食品の持ち込み制限などが入院オリエンテーションに組み込まれておる。
サクラ
ちなみに化学療法中の悪心嘔吐対策ってどんなことがありますか。
博士
5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾンの3剤併用が高度催吐リスク時の標準。冷たい食事・少量頻回食・環境整備による嗅覚刺激の低減もケアの一環じゃ。
サクラ
患者さんに「ダメ」と伝えるのではなく、「なぜそれが治療に関わるか」を伝える姿勢、大切ですね。
POINT
急性骨髄性白血病の寛解導入化学療法では嗅覚過敏と悪心嘔吐が高頻度に生じ、強い香りは本人の治療遂行を妨げ、同様の治療を受ける同室患者の体調にも悪影響を及ぼします。Aさんへの対応は、行動を一方的に指示するのではなく、香りが治療に及ぼす影響を具体的に説明し、自己決定による行動変容を促す教育的アプローチが最適です。同室患者の別室移動は根本解決にならず、医師許可の説明は誤情報であり、文化背景の異なる外国人患者では理由の丁寧な共有が不可欠です。病棟では無香料製品の推奨や持ち込み物の環境調整が入院オリエンテーションに組み込まれており、制吐薬併用による悪心管理も含めて包括的に支援します。根拠をもって患者の納得を引き出す関わりは、成人看護におけるセルフケア支援の核心といえます。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 20 歳、女性、外国籍)は、6 月に来日し、9 月に大学に入学した。入学して 1 週後、Aさんは大学でめまいを起こして座り込み、同じ国から昨年留学生として来日した友人に付き添われ病院の内科外来を受診した。外来では多くの患者が受診を待っており、診察までに時間がかかっていた。Aさんは、日常会話程度の日本語が話せ「身体がだるくて立っていられません」と看護師に伝えた。 Aさんは、急性骨髄性白血病( acute myeloid leukemia )と診断され、血液内科病棟の 2 人部屋に緊急入院になった。病棟看護師が入院オリエンテーションをするため病室を訪れたところ、同室の患者から「Aさんの香水の香りが強いので、つらい」と訴えがあり、看護師もその香りが気になった。 看護師の対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 のAさんに香りが本人および同室の患者の治療に及ぼす影響を説明するです。急性骨髄性白血病に対する寛解導入化学療法では、強い嘔気・嘔吐、食欲低下、嗅覚過敏が高頻度に生じます。強い香りは悪心悪化の要因となり、Aさん本人の治療遂行を妨げるだけでなく、同様に化学療法や重篤疾患で入院する同室者の体調にも直接影響します。したがって単に止めるよう指示するのではなく、香りが治療そのものに及ぼす影響をAさんに説明し、納得したうえで自ら控えてもらう支援的アプローチが最も適切です。文化背景の異なる外国人患者では香りの使用習慣も多様なため、理由を丁寧に伝えることが欠かせません。
選択肢考察
-
× 1. 同室の患者に別室への移動を勧める。
根本解決にならないうえ、新たな同室者でも同じ問題が再発する。入室状況や空床の都合もあり、安易に勧められる対応ではない。
-
× 2. Aさんに香水を洗い流すよう説明する。
行動指示のみで理由を説明しないとAさんの納得を得にくく、信頼関係を損なう恐れがある。体調不良中の入浴そのものも慎重に検討する必要がある。
-
× 3. Aさんに香水の使用は医師の許可が必要と説明する。
香水使用は医師の許可事項ではなく、誤った情報提供となる。患者教育の根拠として不適切。
-
○ 4. Aさんに香りが本人および同室の患者の治療に及ぼす影響を説明する。
化学療法中の嗅覚過敏・悪心悪化、同室者への影響を具体的に伝え、自己決定を支える働きかけが最も適切。外国人患者では文化背景への配慮も重要。
急性骨髄性白血病の寛解導入療法では、シタラビン+アントラサイクリン系(7+3レジメン)が標準的。骨髄抑制による感染リスク、悪心嘔吐、口内炎、脱毛、心毒性などに注意する。病棟環境では無香料製品の使用、強い花・食品の持ち込み制限など環境調整が大切で、患者教育の一環として入院時オリエンテーションに組み込む。外国人患者への対応では文化尊重と医療上の必要性の両立が求められる。
化学療法中の嗅覚過敏を踏まえ、患者教育の適切なアプローチを選ぶ設問。指示ではなく理由説明による自己決定支援がカギ。
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