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異国の病院で泊まりたい家族――対話で合意を築く看護

看護師国家試験 第109回 午後 第120問 / 看護の統合と実践 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第120問

次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 20 歳、女性、外国籍)は、6 月に来日し、9 月に大学に入学した。入学して 1 週後、Aさんは大学でめまいを起こして座り込み、同じ国から昨年留学生として来日した友人に付き添われ病院の内科外来を受診した。外来では多くの患者が受診を待っており、診察までに時間がかかっていた。Aさんは、日常会話程度の日本語が話せ「身体がだるくて立っていられません」と看護師に伝えた。 Aさんが入院したという知らせを受けて、Aさんの家族が来日し、病棟に見舞いに来た。Aさんの家族は、Aさんの身の回りの世話を泊まり込みで行うために、大量の私物を持ち込んでいる。 看護師の対応で最も適切なのはどれか。

  1. 1.Aさんと家族が納得できる解決策を話し合う。
  2. 2.希望通りAさんの病室に泊まることを許可する。
  3. 3.日本では家族の泊まり込みはできないと説明する。
  4. 4.近隣のホテルに泊まって、日中のみ通うよう勧める。

対話形式の解説

博士 博士

Aさんの事例もラストじゃ。家族が来日してお見舞いに来たが、泊まり込みで身の回りの世話をするために大量の私物を持ち込んでおる。

アユム アユム

不安な気持ちから一気に来たんでしょうね。家族としては当然の心配だと思いますが、病棟としては困りますよね。

博士 博士

そこで看護師の対応として最も適切なものを選ぶ。選択肢を整理しよう。

アユム アユム

1は本人・家族が納得できる解決策を話し合う、2は希望通り泊まるのを許可、3は日本では家族の泊まり込みはできないと説明、4は近隣ホテルから通うよう勧める、ですね。

博士 博士

まず日本の入院基本料の原則を知っておくか。

アユム アユム

診療報酬上、患者負担による付添看護は原則認められていません。ただし小児や治療の理解が困難な場合、医師の許可があれば例外的に認められることもあると学びました。

博士 博士

正解じゃ。だから選択肢3の「一律不可」は不正確。そして選択肢2の「希望通り許可」も、同室患者への影響・感染対策・プライバシーを考えると難しい。

アユム アユム

選択肢4のホテル案も悪くはないですが、家族の事情を聞かないまま押し付けると異文化対応としては失礼ですね。

博士 博士

その通り。だから正解は1。まずは本人と家族の意向を丁寧に聴き、病棟ルール・病状・家族の希望を統合して合意形成を図る。

アユム アユム

具体的にはどんな折衷案がありますか。

博士 博士

面会時間の延長、家族控室の利用、院内または近隣の患者家族用宿泊施設の紹介、日中のみの付き添い許可、重要処置時は同席可能など、組み合わせて提示できる。

アユム アユム

外国人家族だと文化背景もありますよね。家族が身の回りの世話をするのが当然という国もある。

博士 博士

まさに。家族観・宗教・食習慣は国によって多様じゃ。医療通訳やMSW(医療ソーシャルワーカー)、多文化共生コーディネーターを交えて話を進めるのがよい。

アユム アユム

Aさん本人の意向も確認することが大事ですよね。家族に任せたいのか、自分のスペースを保ちたいのか。

博士 博士

その通り。本人不在で家族とだけ話して決めてしまうのは、Aさんの自己決定を損ねる。治療の主体はあくまで患者本人じゃ。

アユム アユム

同室患者への説明も必要ですか。

博士 博士

うむ、共通の病棟環境を使うのだから、プライバシーを守りつつ必要な範囲で協力を得るようにする。

アユム アユム

入院時の感染対策や夜間の環境維持も考えると、全面許可は難しいんですね。でも全面禁止もまた違う、と。

博士 博士

その通り。医療制度の原則を踏まえつつ、患者・家族・同室者の三者を尊重して調整する。これが異文化看護の真価じゃ。

アユム アユム

ルールを伝えるだけでなく、対話で合意を作るのが看護師の役割なんですね。締めくくりにふさわしい学びになりました。

POINT

入院基本料を算定する病棟では、患者負担による付添看護は原則認められませんが、特別な事情があり医師の許可を得た場合には例外的な付き添いが可能となる運用もあります。異文化背景をもつ家族への対応では、一律の禁止・許可ではなく、病状・病棟ルール・家族の希望・本人の意向を統合し、面会時間延長や家族控室利用、近隣宿泊施設の紹介などの折衷案を提示することが求められます。医療通訳や医療ソーシャルワーカーを活用し、文化・宗教・食習慣への配慮を怠らない姿勢が信頼関係の基盤となります。同時に同室患者の感染対策やプライバシー保護も忘れてはならず、関係者全員の利益を踏まえた調整が看護師に期待されます。対話による合意形成は、多様化する医療現場において看護実践の核心に位置付けられるスキルです。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 20 歳、女性、外国籍)は、6 月に来日し、9 月に大学に入学した。入学して 1 週後、Aさんは大学でめまいを起こして座り込み、同じ国から昨年留学生として来日した友人に付き添われ病院の内科外来を受診した。外来では多くの患者が受診を待っており、診察までに時間がかかっていた。Aさんは、日常会話程度の日本語が話せ「身体がだるくて立っていられません」と看護師に伝えた。 Aさんが入院したという知らせを受けて、Aさんの家族が来日し、病棟に見舞いに来た。Aさんの家族は、Aさんの身の回りの世話を泊まり込みで行うために、大量の私物を持ち込んでいる。 看護師の対応で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 1 のAさんと家族が納得できる解決策を話し合うです。現在の診療報酬上、入院基本料を算定する病棟では「患者負担による付添看護」は原則認められませんが、小児や患者の理解が困難な場合、特別な事情があり医師の許可を得た場合には例外的に家族の付き添いが認められる運用もあります。外国籍のAさんの家族は急遽来日して不安が強く、異文化の入院環境で身の回りの世話を直接行いたい希望は自然な反応です。看護師はまず、病状・病棟ルール・家族の希望・Aさん自身の意向を丁寧にすり合わせる話し合いの場を設け、多職種で折衷案(面会時間延長、付き添い用家族控室の利用、宿泊施設の紹介など)を検討するのが最も適切な対応です。

選択肢考察

  1. 1.  Aさんと家族が納得できる解決策を話し合う。

    異文化背景と家族の不安を踏まえ、病棟ルールと本人・家族の意向を統合して合意形成を図る支持的アプローチが最も適切。

  2. × 2.  希望通りAさんの病室に泊まることを許可する。

    入院基本料上の原則と同室患者への影響(感染・プライバシー・環境整備)を考えると、希望そのままの許可は不適切。

  3. × 3.  日本では家族の泊まり込みはできないと説明する。

    例外的に認められる場合があり、一律に不可と伝えるのは不正確。家族の事情を聴かずに拒否する対応は信頼関係を損ねる。

  4. × 4.  近隣のホテルに泊まって、日中のみ通うよう勧める。

    選択肢として提案する余地はあるが、意向確認や話し合いを経ずに一方的に勧めるのは不適切。話し合いのなかで検討される選択肢の一つ。

外国人患者の家族対応では、宗教・食習慣・家族観の違いを踏まえ、翻訳ツールや医療通訳の活用、院内の家族控室・患者用宿泊施設・近隣の患者家族用宿泊施設の情報提供などを組み合わせる。病院のソーシャルワーカー(MSW)や多文化共生コーディネーターの介入も有効。一方で感染対策・同室患者への配慮から、病室内での泊まり込みは原則制限されるため、代替案を具体的に示すことが合意形成の鍵になる。

異文化背景の家族との意向調整場面で、禁止・許可の二者択一ではなく合意形成を選ぶ問題。