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気腹法腹腔鏡下手術中の合併症を学ぼう

看護師国家試験 第103回 午前 第95問 / 看護の統合と実践 / 臨床実践場面における統合的な判断

国試問題にチャレンジ

103回 午前 第95問

次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(56歳、女性、主婦)は、胆石症(cholelithiasis)と診断され、腹腔鏡下胆囊摘出術予定で入院した。Aさんは身長152cm、体重70kgである。Aさんは、数年前に脂質異常症(dyslipidemia)を指摘されたが、治療は受けていない。Aさんにその他の特記すべき既往歴はない。 Aさんは、全身麻酔下で気腹法による腹腔鏡下胆囊摘出術を受けた。手術中にAさんに最も生じやすいのはどれか。

  1. 1.褥瘡
  2. 2.高体温
  3. 3.無気肺(atelectasis)
  4. 4.脳梗塞(cerebralinfarction)

対話形式の解説

博士 博士

Aさんは気腹法による腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けたぞ。術中に最も生じやすい合併症はどれかな?

サクラ サクラ

博士、気腹法って腹腔内に空気を入れるんですか?

博士 博士

正確には二酸化炭素を5〜15mmHg程度の圧で腹腔内に送気して視野を確保する方法じゃ。これにより腹腔内圧が上昇し、横隔膜が頭側に押し上げられるんじゃよ。

サクラ サクラ

それで肺に影響が出るんですね。

博士 博士

その通り。全身麻酔の筋弛緩で横隔膜が挙上し機能的残気量が低下、さらに気腹で押し上げられて背側肺が圧迫される。これが正解の鍵じゃ。

サクラ サクラ

正解は何番ですか?

博士 博士

正解は3番、無気肺じゃ。横隔膜挙上による肺圧迫、分泌物貯留、仰臥位の換気血流不均等が重なり、肺胞虚脱が生じやすいんじゃ。

サクラ サクラ

1の褥瘡はどうですか?

博士 博士

長時間体位なら起こりうるが、本術式は数時間で終わり除圧マットも使うから、無気肺ほどの頻度ではないのじゃ。

サクラ サクラ

2の高体温は?

博士 博士

全身麻酔では逆じゃ。中枢温調節抑制、末梢血管拡張、皮膚露出、輸液で低体温になりやすく、加温対策が必要なんじゃ。

サクラ サクラ

4の脳梗塞は?

博士 博士

脂質異常症はリスクではあるが、術中脳梗塞の発症頻度は低い。無気肺の頻度には遠く及ばんのじゃ。

サクラ サクラ

気腹で他に何が起こりますか?

博士 博士

静脈還流障害による血圧低下、CO2貯留による高炭酸ガス血症、皮下気腫などじゃ。麻酔科医は呼気CO2モニタリングで管理しておるぞ。

サクラ サクラ

術後の予防策は?

博士 博士

早期離床、深呼吸練習、インセンティブ・スパイロメトリーが基本じゃ。喀痰の自己排出を促し、無気肺を肺炎に進行させないことが看護のポイントじゃよ。

サクラ サクラ

特殊体位も使うんですよね?

博士 博士

胆嚢摘出術では逆トレンデレンブルグ位(頭高位)が多用される。循環動態と神経損傷、ずれによる体位変化にも注意が必要じゃ。

POINT

気腹法腹腔鏡下手術では、全身麻酔の筋弛緩と腹腔内圧上昇により横隔膜が挙上し背側肺が圧迫されて無気肺が最も生じやすくなります。低体温、CO2貯留、静脈還流障害なども問題で、麻酔科医による呼吸循環管理が重要です。術後は早期離床と呼吸訓練で肺合併症を予防します。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(56歳、女性、主婦)は、胆石症(cholelithiasis)と診断され、腹腔鏡下胆囊摘出術予定で入院した。Aさんは身長152cm、体重70kgである。Aさんは、数年前に脂質異常症(dyslipidemia)を指摘されたが、治療は受けていない。Aさんにその他の特記すべき既往歴はない。 Aさんは、全身麻酔下で気腹法による腹腔鏡下胆囊摘出術を受けた。手術中にAさんに最も生じやすいのはどれか。

解説:正解は 3 です。全身麻酔下では筋弛緩薬使用に伴い横隔膜が頭側に挙上し、機能的残気量が低下します。さらに気腹法で腹腔内圧を上昇させると横隔膜がさらに押し上げられて肺の背側が圧迫され、加えて分泌物貯留と仰臥位による換気血流不均等が重なり、肺胞虚脱(無気肺)が起こりやすくなります。腹腔鏡下胆嚢摘出術では特に背側下肺野の無気肺が術中に生じやすい合併症です。

選択肢考察

  1. × 1.  褥瘡

    長時間同一体位による褥瘡リスクはありますが、腹腔鏡下胆嚢摘出術は数時間で終了することが多く、術中除圧マットの使用で予防可能なため、最も生じやすいとはいえません。

  2. × 2.  高体温

    全身麻酔では中枢温調節中枢の抑制、末梢血管拡張、皮膚露出、輸液により低体温になりやすく、加温対策が必要です。高体温よりも低体温が生じやすい状況です。

  3. 3.  無気肺(atelectasis)

    全身麻酔による機能的残気量低下に加え、気腹法で横隔膜が押し上げられ背側肺が圧迫されるため、術中無気肺が最も生じやすい合併症です。

  4. × 4.  脳梗塞(cerebralinfarction)

    脂質異常症はリスク因子ですが、術中に脳梗塞が発症する頻度は低く、無気肺の発生頻度には及びません。

気腹法では二酸化炭素を5〜15mmHgで腹腔内に送気し視野を確保しますが、これにより横隔膜挙上、静脈還流障害、CO2貯留による高炭酸ガス血症などが生じます。術後は早期離床、深呼吸、インセンティブ・スパイロメトリーで肺合併症を予防します。腹腔鏡手術ではトレンデレンブルグ位や逆トレンデレンブルグ位など特殊体位を取ることも多く、循環動態への影響にも注意が必要です。

全身麻酔と気腹法による腹腔鏡下手術中に最も生じやすい合併症として、無気肺の発生機序を理解しているかが問われています。